総資産530億ドルのニューヒーロー、ラルゴ・ウィンチ。コミック化もされた人気ベルギー小説はコミック化もされ、フランスにも飛び火して大ベストセラーとなり、テレビシリーズもベルギー=カナダ=フランス合作で2シーズンまで制作されるほどの破竹の勢い。身体能力がスバ抜けているばかりか4カ国語を自在に操るほどに知性的、当然のことながらイケメン、そして大富豪。そんなカンペキなヒーローが、いよいよフランスから上陸だ。
香港を拠点とする世界有数の巨大財閥、ウィンチ・グループ。父の死により後継者となった養子のラルゴ(トメル・シスレー)は、トップの座を狙う敵から日々命を狙われている。望まぬ富と権力を手にしまった彼だが、ある日、世界経済をも揺るがす発表をする。「会社を売却して慈善事業に投資する」と……。
ラルゴを演じるトメルは、長編映画どころか主役さえもこの映画が初めてだという。にも関わらず、キャラ設定にまったく負けない余裕のオーラでスクリーンを支配する。ハードなアクションシーンもスタントマンなどに頼らず、すべて自分で行なったというから驚きだ。特筆すべきはスカイダイビングのシーン。準備も含めて111回も降下したそうだが、堂々の貫録で完璧なヒーローをこなしている。
そのアクションシーンだが、細かい演出にイチイチ凝っていて素晴らしい。いわゆるハリウッドなら美しさを最優先にしてそうは描かないだろう鼻血の噴出ラインや、敵側も実は余裕なんかじゃないんだよ、というリアルな手の震えの描写等々、気の配り方が緻密で芸術的なのだ。そうしたディテールを何層にも積み重ねることによって、ともすれば架空の話で終わってしまいそうなこの世界観をリアルなものに仕立てることに成功している。アクション映画とは、こうでなくては。
二人の相棒役のキャラもそれぞれピンと立っており、好感度抜群でラルゴとの対比を際立たせている。ラルゴもイイけどあの子も好き、と思わせる女子心の掴み方。また、『氷の微笑』を彷彿とされるシャロン・ストーンの足組みシーンもさりげなく入れているあたりも、ある特定の年代の男性諸氏を「おぉっ」と思わせるだろう。
フランス=ベルギー=ドイツ合作で、タイ、バンコク、香港、ベルギー、ドイツ、フランス、ロンドン……と壮大なスケールで贈る本作。世界経済の動向が危ぶまれる昨今に見合うストーリー展開とは行かないが、エンタメとしてはかなりの傑作なのだ。
監督:ジェローム・サル
脚本:ジュリアン・ラプノー/ジェローム・サル
出演:トメル・シスレー/シャロン・ストーン/ウルリッヒ・トゥクール/マメ・ナークプラシット/オリヴィエ・バルテルミー
配給:コムストック・グループ、クロックワークス
公開:10月29日(土)より銀座シネパトス他にてロードショー
公式HP:http://www.largo-winch.net/
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