ようやく泳いでいる鮭に会いました
赤い鮭のほかに小さな
赤くない鮭も泳いでいますバンクーバーには、鮭の溯上する川がとても身近なところにあります。バンクーバー郊外に住む友人の家のお庭にも、鮭が溯上してくる小川があると聞きました。またダウンタウン西部にあるスタンレーパークにも、鮭が溯上する流れがあるそうです。でもカナダ移住5年目の私が実際に鮭を見たのは、スーパーの魚売り場だけなのでした。
海からブリティッシュコロンビア(BC)州の川に戻ってくる鮭の大溯上は、オリンピックと同じ4年に1度。大溯上の年は、例年の4倍もの鮭が川を埋め尽くすそうです。その大溯上の年が今年だと聞いて、鮭について調べてみました。
鮭の生態については解明されていないことが多いのですが、川で生まれた鮭は海に出て海を回遊して暮らし、産卵の時には生まれ故郷の川に戻るそうです。でもBC州には、鮭が溯上する川は2000本もあるというのに、どうして自分の川を見分けられるのでしょう。鮭は自分が生まれた川の匂いを覚えており、匂いを頼りに溯上するというのです。
そのためには、川はきれいでなければなりません。その川を1カ月以上、何も食べないで必死に遡って故郷に辿り着き、無事に産卵を終えた鮭はそこで一生を閉じるのですが、その後は熊や鹿などの動物の餌になったり、鮭の死骸のために土壌が肥えて植物に栄養を補給していたり、地球規模のエコシステムにおいても重要な役割を果たす生物だったのです。
食卓ではなじみがある鮭ですが、そんな興味深い生物だと知り、どうしても鮭の溯上が見たくなりました。まして4年に1度のチャンスかもしれません。そこで、急遽日本に戻る前に行ったのが、バーケンヘッド川(Birkenhead river)。
鮭は太平洋からフレーザー川・ハリソン湖・リルーレット川を経由してこのバーケンヘッド川を遡上するのですが、大溯上の年は川の水面は真っ赤に彩られ、息を呑むほどの光景が見られると聞いたのです。
真っ赤になった川面を見たかった!
バーケンヘッド側の標識
Cohoは銀鮭、Sockeyeは紅鮭私たちはバンクーバーからハイウェイ99号線に乗り、ペンバートンを過ぎてそのまま走りました。しばらく行くと橋があり、その橋の横に車を停めてバーケンヘッド川に降りたちました。溯上してきた鮭に会うことができるでしょうか?
……時期が早かったせいか、川は真っ赤になってはいません。ちょっとガッカリしたのですが、目を凝らして足元の浅瀬を覗き込むと、手を水に浸せば触れそうなところに鮭が数匹泳いでいるのが見えました。ほのかに赤い色をした大きな鮭は、産卵の場所を探しているのでしょうか、ゆっくり泳いでいます。
バンクーバー・ダウンタウンの
スーパーで売られていた鮭必死の思いで川を遡りこの川に帰ってきた鮭たち。 最後の力を振り絞って産卵した後は、 ここで生涯を閉じるのだと思うと、なんだか胸が熱くなる思いでした。
その日の夕方、バンクーバーに戻って近所のスーパーに寄りました。
カットされた鮭の切れ身が余りに鮮やかなサーモンピンクなので、迷わず買いました。この鮭は4年もかけて生まれ故郷の川に戻る途中で捕獲され、産卵を果たせなかったのかもしれません。ちょっと感慨深いものを感じながら、鮭のムニエルを味わった夜でした。