街が、国が、水色と白に染まった自分の国が建国何周年……だからお祝い、という概念は私にはない。だからうらやましかったし、だからあんなにも感動してしまったのかもしれない。
今年はアルゼンチンの建国200周年。昨年の革命記念日時の記事でも少し触れたが(http://asobist.samplej.net/tokushu/tokushu-2/090611.php)アルゼンチンが植民地支配を続ける宗主国スペイン王制に対して革命を起こし、国として独立を勝ち取る一歩を踏み出したのがちょうど200年前の1810年。
その建国200年(ビセンテナリオ)の革命の月(5月)の22日から25日の5日間にわたって国は水色と白のアルゼンチンカラーに染まった。私は首都ブエノスアイレスでビセンテナリオを向かえたが、街の中心である「7月9日大通り」では車の通行が一切止められて歩行者天国と化し、毎日パレードやコンサートが催された。
「7月9日通り」は連日人で溢れていたそして各プロビンスの歴史や自然、産業が勉強できるようなパビリオンや土地の特産物が楽しめるフードスタンドが出展されたり、通りを歩くにつれて国の歴史がさかのぼって振り返れるようになっていたりと、国のシンボルである大通りで国の縦(歴史)と横(広大な国の各地域)が見事に絡み合う演出が成されて大盛り上がりであった。
そして毎日本当に多くの人が「7月9日通り」に集まった。子どもから大人まで自国の200歳の誕生日を心から祝っていた。政治的にも経済的にも多くの課題をかかえるアルゼンチンで、豊かであろうが貧しかろうが政治的に左であろうが右であろうがそんな違いはひとまず置き、アルゼンチン人であることを誇りに思いアルゼンチンという国への思い入れの強さを新たにする……。独立を勝ち取った国の強さを見た気がした。そして騒ぎや混乱なく国民がひとつになれたこと自体にアルゼンチン人自身も驚いていた。様々な課題を抱えるなかで向かえたビセンテナリオに対して、あきらめではなく誇りと自国への愛着で国民がひとつになった「一体感」は彼ら自身をも感動させたようだった。
各国の民族衣装をまとったパレードも見事だった
犬もアルゼンチンカラーをつけてお祝い思えば彼らにとっては建国以来の歴史は個人の人生の少しの延長上に自国の歴史を当てはめて考えられるほど。国はまだ若くこの国をなんとかしたい、なんとかできるという気持ちがビセンテナリオを機に再び沸いてきたのかもしれない。友人のひとりは「祖母が何のためにイタリアからアルゼンチンに来たのかって思ったらこの国を諦めたくない」と強い言葉を口にしていた。
政治的にも経済的にも今アルゼンチンが抱える問題は一筋縄ではいかず、政治の舵取りにいらだつこともしばしば。でも水色と白のアルゼンチンカラーに見事に染まった「7月9日通り」の人ごみのなかで感じた一体感、実にうらやましいものだった。
こちらは歩行者天国になった「7月9日通り」
歴史的にも関係が深いボリビアのパレード