初雪がやってくると、雪国の住人達はとにかく忙しい。車のタイヤを交換したり、冬用のコート、マフラーや手袋をひっぱり出してきたり。もちろん心の準備も必要だ。これから約4カ月以上もの間、土の地面や緑の木々とはお別れ。公園は子供たちの雪遊びの場になり、山やゴルフ場はスキー場に変身する。さて、あたり一面が雪で覆われてしまう前に、散歩にでかけよう。
札幌市民の足・札幌市電
バラ園は秋のバラが満開
札幌の街は散歩するととても気持ちがいい。春は陽気に誘われて、夏はさわやかな夕風に吹かれ、秋は染まる樹木を眺め考え事をしつつ。今日は毎月5日と20日に使用できるエコキップを使って、札幌市内中心部から路面電車に揺られて20分、お散歩スポットのひとつ、藻岩山麓へ向かった。
まずは藻岩山標高93メートルの山麓にある『ちざきバラ園』へ。他の公園と同じように冬の間は閉園される。元衆議院議員の地崎宇三郎の個人庭園として、昭和42年に完成。6月から10月まで、あたりを埋め尽くすような美しいバラの花が訪れる人々を魅了する憩いのガーデンだ。ここから一望できる札幌の街並みはすばらしい。遠くの山の頂上が少しだけ雪で白く覆われ、札幌の街中はすでに葉が落ちた木々と冷たい空気で透き通って見える。こういう景色が楽しめるのは冬の前の一瞬だけ。
バラ園の名物・ローズソフトクリーム
札幌の街並みを眺めながら、バラ園内のカフェ・ローズでちざきバラ園オリジナルのローズソフトクリームをいただく。バラのジャムをベースに色もピンク色のソフトクリームだ。
ちざきバラ園から歩いて10分。同じく藻岩山の麓の高台にある、『ろいず珈琲館旧小熊邸』へ。こちらは旧北海道帝国大学農学部の小熊桿氏の邸宅として作られた建物。アメリカの著名な建築家フランク・ロイド・ライトに師事した田上義也によって設計された。大胆な屋根や窓の作りがモダンでいちど目にすると忘れられない印象的な建物だ。金銭的、気候的問題から古い建物の保存が難しい北海道で、取り壊さずここに復元するのにはNPO法人旧小熊邸倶楽部の関係者によるたいへんな努力があった。
今ではテナントとして『ろいず珈琲館』が喫茶店として利用している。藻岩山の麓の高台にあるので、こちらからの眺めも抜群だ。外のテラスで秋晴れのさわやかな風にふかれながらコーヒーをいただいた。
ぼんやりとそろそろ冬を迎える札幌の街を眺める。こんな風に外で風に吹かれながらソフトクリームや珈琲をいただく楽しみとは、しばらくお別れ。
ろいず珈琲館
ちざきバラ園からの札幌の街一望
でも大丈夫。これからは暖房をがんがんにした部屋の中でぬくぬくとアイスクリームをいただくっていう贅沢な冬の楽しみがあるんです。あ、きんきんに冷えたビールをストーブの前でぐいぐいってのもいいんだなあ。
これで、雪が積もる前の胃袋の準備は完了だ。