芸術と肉の嵐でおなかいっぱい―『国旗の日』


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まずは質問から……。
「日本とアルゼンチンの共通点とは……?」
この質問に「両国とも国旗は太陽を基にしている」と言った人がいた。国旗に対する見方は国の歴史、また個人によって違うだろうが、こういう視点は興味深いなあと思った。

前回の特集記事で革命記念日の話をしたが、その革命の際に独立運動の英雄マヌエル・ベルグラーノ将軍が使った帽章の色を基に制定されたのがアルゼンチンの国旗の始まり。何度かの改訂を経て、現在のデザインは、水色・白・水色と横に三層ラインが入り真ん中に太陽のシンボルが掲げられている。中央の太陽は革命の月(5月)にちなんで「5月の太陽」と呼ばれるがこの国旗はアルゼンチン人にとって独立を勝ち取った象徴のひとつ。そのベルグラーノ将軍が没した日にちなんで6月20日は『国旗の日(el Día de la Bandera)』とされ、祝日として制定されている。ちなみにベルグラーノ将軍はアルゼンチンの10ペソ紙幣の肖像でもある。


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タンゴショーなど、いたるところでイベント開催中

革命を象徴する国旗の日だからか、祝日の前倒しで連休だったからか、元々イベントやお祭りの多い都市だからか、またそれに輪をかけるように来年の建国200周年を前にいつもにもまして多くのイベントが開催されているからか……とまあ、すべての要素が重なりこの連休のブエノスアイレスはイベント、フェア、コンサート、音楽、踊り、ショーなどで盛り上がっていた。市民センターでは大人向けに地域の歴史を振り返る内容の劇が、子供向けに人形劇が無料で公演、スブテ(地下鉄)でも数カ所の駅でライブ演奏が行なわれていた。街のあらゆる場所でそれぞれの盛り上がりを見せていた。
私は溢れるほどの選択肢から、有名なタンゴ歌手のコンサートに顔を出した。そして近所で行なわれたタンゴショーも楽しんだ。これらもすべて無料。市民が誰でも「芸術」と名がつくものにこのようにアクセスできる街は先進国でも数少ないのではないか? 「南米のパリ」ブエノスアイレス、ここにありだ。

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↑↑お、おいしそう……。これらを夜半過ぎまで食べるのがアルゼンチン流 ↑↑
さて、そんな風にお祭り騒ぎを楽しんだ後はパリージャ(PARRILLA)へ向かう。パリージャは牛肉や鶏肉プラス、レバーや腸詰めなど臓物の炭火焼きの盛り合わせを食べるお店のこと。自分の好きな部位だけを選んだらいいのだが、まあとにかく「カルネ(肉)」のオンパレード! 私のお薦めトップ3は、チョリソ、モルシージャ(黒いソーセージ=豚の血入りで黒くなります)とモジェハ(牛の胸腺)! カリカリになる寸前まで火にかけたチンチュリン(牛の小腸)に塩とレモンを絞っていただくのもたまらない!

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チンチュリンとモルシージャ。どちらもクセになる味で
アルゼンチンで驚かれるのが肉のボリュームだが、驚くのはそれだけではない。これらのぶ厚い肉の塊を夜9時過ぎから2時間以上かけてゆっくりと楽しむのがアルゼンチンの習慣。
いつまでたっても、彼らのスタマゴ(胃袋)の方が私にとっては驚異である。