クリシェの国のとっておきのお菓子


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鳥の巣発見

1年の半分以上が寒いスウェーデンにも、かすかに春の気配が訪れています。外を歩けば心地よい小鳥の囀りが聞こえ、冷たい空気の中に春らしいすがすがしさを感じ、誰にも知られないほどにひっそりと小さな草花がお目見えするのが今の時期。今回はそんな春の空気を感じながら、スウェーデンのスイーツをご紹介します。
今の時期といえば、何といってもセムラでしょう。年明けからイースター直前まで出回る季節限定品で、カルダモン入りのバンズ形ブレッドに、たっぷりのホイップクリームとアーモンドペーストを乗せた独特のお菓子は、カフェごとのセムラ評が新聞に掲載されるなど、国民に大人気。一見シュークリームに似ているので、口にして味のギャップに驚く日本人は多いでしょう。じつは私もそんな中の一人でした…。


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こちらがセムラ


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バニラハートというスイーツ。


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カフェでおなじみのスイーツたち。

ただ人間の味覚とは面白いもので、今では季節が来ると食べなくては!と思わされるスイーツです。さて、おいしいセムラの定義は、1)甘めで適度にやわらかさのあるバンズ、2)手で丁寧に泡立てたほんのり甘いホイップクリーム、そして味の決め手となるのが、3)アーモンドペーストの加減。
ペーストはホイップクリームの真ん中がベストポジションで、さらっとしたタイプが好みの人もいれば、濃厚なものが好みの人も。風味はアーモンドエッセンス入りの杏仁豆腐を思い浮かべるとよいでしょう。私は杏仁豆腐好きなのでむしろおいしいのですが、ここが味覚の好みが分かれるところで、セムラ入門(?)への大きなポイントなのです。


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セムラを購入したカフェ

食べ方は、バンズの三角の「フタ」をスプーン代わりに、クリームをすくって食べるのがモダンなのだとか。レシピサイトでは、フルーツ乗せセムラ、クッキークランチ入りセムラなど、色々な食べ方がありますが、巷では依然として正統派セムラの人気が強いような気がします。

そもそもセムラの歴史は長く、18世紀頃キリスト教の断食期間前の贅沢品として食べられだしたのが始まりで、当初質素なバンズのミルク煮だったものが、20世紀に入りホイップクリームを乗せた現在の形に代わったという歴史を持ちます。


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H&Mの壁に、”Hennes”の文字を発見

カフェで引っ張りだこの少し素朴なセムラの人気の理由は、味覚的理由のほかに、実はセムラとともに真面目に歩んできたスウェーデン人の歴史にもあるのかも知れないと、外国人である私はひとり解釈する今日この頃。そんな国民の思いが詰まっているだろうセムラは、この先も変わらぬ形で末永く存在していくのでしょうか。
素敵なクリシェの国より、とっておきのお菓子