さて、桜も散ったし、仕事も一段落ついた。こうなったらもう、思いっきり露天風呂で泳ぎまくるしかないな。もちろんバタフライでな。
しかも湯は温泉で、価格は銭湯価格の¥450。風呂上りはビールを飲みながら、温泉玉子にかぶりつく。
そんな銭湯ないなかぁなどと目を細めて遠くを見ていたら、なんとあったんです。本当にあったんすよアニキ!
というわけで、早速カバンに風呂道具を詰め込み一路目黒へと向かった。
東急目黒線ムサコ(武蔵小山)駅から全力疾走で約1分。閑静な住宅街の一角に、今回の目指す所である清水湯が建っている。
なんと、営業前だというのに湯客が行列をなしておりますぜ。1、2、3、4……ざっと数えて10人以上は並んでいるだろう。
たのもー! たのもー!
たいして意味はないが、オレは道場破りを装って暖簾を分け入ることにした。
ここ清水湯は、都内でも珍しい天然温泉による銭湯。
療養泉として認定された“黄金の湯”と、美肌作用のある“黒湯”。それぞれ泉質の異なる2種類の温泉を引く、ゴージャスかつスペシャルな銭湯だ。
館内もいわゆる銭湯然とした佇まいではなく、どちらかというと温泉施設的な造りとなっており、露天風呂や岩盤浴などの設備も整っている。
何だか今回は至極真っ当な銭湯リポートになっているじゃないか。やればできるじゃないか。
さて、お遊びはここまでだ。なんってったってオレは道場破りなのだ。
どしどしどしと力強い足取りで脱衣場に入り、一瞬にして洋服を脱ぎ捨てて、全裸で浴場に入場する。
清潔な浴場に漂う温泉の温もり。いいじゃないか。たまらんじゃないか。
では早速お湯を頂戴して……。
といきたいところだが、今回はダメなのだ。お湯に入っちゃいけないのだ。
なぜならば、今回は営業前の取材なので、湯客より先に湯をいただくのはルール違反。つまり、豪華なお膳を前にしながら、けっして箸をつけてはならぬという状況なわけです。
それにしても立派な浴場だ。豪華な温泉施設なのに、価格は良心的な銭湯料金。
この現実を例えるならば、高級リムジンで石焼きいもを売り歩くようなものだろう。
ちくしょー露天風呂がいい感じだぜ?。清々しい春風に吹かれて湯に浸かったら、もう最高だろうな。最高でしょうな。
がしかし、オレに許されているのは撮影だけ。全裸だが撮影だけ。けっして叶わぬ恋心よ。
読者のみなさん、この無念さが分かりますか?
というわけで、銭湯取材はやはり営業中のゲリラ取材に限るという結論に至り、無念のままお開きとさせていただきます……。