執筆者: 鈴木希望

チビ

去年の夏、新潟に帰省した。 実家の茶の間でくつろいでいると、親戚から電話が入り、母が取る。 「今さ、チビが帰って来ったんさ」 チビ。末っ子長女である、私のことを指している。 「ほれチビ、もうすぐご...

泰安天行

父方の祖父は、若い時分、大層なろくでなしであったらしい。 仕事をさせれば、他人の半分の時間で、他人の倍以上はこなすという器用さであったにもかかわらず、ある時突然「俺は歌唄いになる」などと言い出し、ろく...

そうめん弁当と「魔王」

中学校に入学したばかりの頃、私の斜め前の席に座っていた男の子。大きな目とやや尖り気味の口元が可愛らしいが、注目を集めそうなタイプではない。小学生の頃から"ボケ"と仇名される、どこか飄々とした雰囲気の持...