vol.06:アレンハンドロ・小森MAIDE IN SPAIN 2005


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スペイン発 若き二人の画家・日本上陸
MADE IN SPAIN 2005は昨年の2004に続き開催された。
このグループ展は、画家の神津善之介さんのプロデュースにより10月27日から11月1日まで、神宮前のPROMO-ARTE Project Galleryで開かれた。

スペインで活躍している神津さんが、たくさんの才能と出会い、友好を暖めた中で、お世話になったお礼に自分は彼らに何をしてあげられるのだろうかという感謝の思いが形になったのがMADE IN SPAIN 2005。


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「僕にとってスペインという国は懐が深くて、外国人であっても快く迎えてくれる。たとえばアメリカやフランスではコネクションもなく、ある種の政治力もなくいきなり個展を開くとか、賞を取るとかということはできません。でも、スペインはそういうことがなく、分け隔てなく、いいものはいいと受け入れてくれる。そういうスペインで勉強をし、その中で素晴らしい絵を描く人たちと知り合いました。彼らが日本を見たらどう感じるのだろうか。また、日本の人たちが彼らの絵を見たらどう感じるのだろうか。この二つに興味を持って、MADE IN SPAIN を年に一度開催しています」

今回はアレハンドロ・小森(メキシコ)、クリスチャン・パンコフ(イタリア)、サンティアゴ・ピカトステ(スペイン)、神津善之介(日本)の4人展だった。それぞれ、スペインで勉強し、活躍している30代前半の若き画家たちだ。

それでは、今回来日したアレハンドロ・小森とクリスチャン・パンコフをご紹介しよう。もちろん、言葉の壁に穴を開けてくれたのは、神津さんの流暢なスペイン語だ。


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名前から分かるように、彼は4分の1だけ日本人の血が入っている。このMADE IN SPAIN 2005に行ったのは、かつて筆者がメキシコでお世話になったお礼を言いたくて、彼のお父さまを訪ねる目的もあった。またメキシコで会えなかったアレハンドロの絵も見たくて、叔母に誘われるまま訪ねたことから始まった。

アレハンドロは実にナイーブでシャイな青年。それは一目で分かる。彼の絵は西洋人が描く絵でもなく、メキシコ人が描く絵でもなく、日本人が描く絵でもないように思えた。彼の絵は限りなくモノトーンに近く、人物が影のように、あたかも実体がそこにないかのような印象を受ける。


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「僕は人物に興味があります。その人物をとりまく空気とか雰囲気。特定の人物ということはなく、人物を描いている時に、自分の気持ちを投影して描いています。一種の自画像のように。でも、数々の色で現す、喜びや悲しみや優しさが、一見黒っぽく見える色の中に込められていて、メランコリックに見えるかも知れないけど、そこにはさまざまな表現が内在しているんです。僕がメキシコ人ということと僕が描く絵との関係は自分で強く意識したことはありません。僕が4分の1日本人でも日本人にはなりきれないように、他の誰とも違う体臭のようなものかもしれない」

ちょっと質問が深く入り込んだせいもあり、ここで、クリスチャンから「質問どおり訳しているのかい」と聞かれた神津さん「いや、ボクが作って悪いことばかり言って るよ」と冗談を言ったそうだ。聞き手としては、まったく神津さんを頼るしかないが、あまりにもストレートな質問をぶつけてしまったようで、申し訳ありません。お許し くださいと言いつつもさらに続けた。


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作品の中に日本人の血を感じることはありますかという問に

「自分に日本人の血が流れていることは、絵をみて後からそう思うときがある。絵を見ることによって僕がメキシコ人でもなくヨーロッパ人でもなく日本人でもない。そういう場所にいるんだと。でも、それは自分にとってはとても楽しいことなんです。単一な血ではなく、いろんな血が混ざっている自分だけが表現できることがあるかもしれないとね。生まれる前にいろんな所を旅したような、そんな気分。DNAは自分にとって大きいものだと感じます。理論的にどうだとはいえないけど、きっと自分の絵にはそれがでているはず」

あまりにもDNAとか、そういう話をしすぎてしまったが、彼の絵にはどうしても切り離せない何かがあるように思えて仕方がなかった。リビングに飾って鑑賞するというよりも、独りだけで見ていたい。見ている姿を誰にも見られたくない。おそらく手にした瞬間から自分だけの絵にしたい絵なのだ。

最後に一番好きな絵は?との問に


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「最後の作品。これは実験を試みた絵で、ベラスケスの絵を取り入れて、17世紀という古い時代のものと現代との対比と交差。そして時間的ギャップの面白さをテーマにしているもの。僕は強い色と弱い色、それらが交差する面白さも描いていきたいと思っています」

アレハンドロは来年もまた日本に来てくれるでしょうか、もし来てくれたら今度はもっと気楽なインタビューをしたいと思っています。一緒に居酒屋などに行って、アレハンドロの陽気な一面もみたいと思いました。だって、ご家族そろってすごく陽気なメキシコの方たちなのですから。


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最初に名前を聞かれた。名刺をくださいと言われ慌ててしまった。そういえば名も名乗らずに取材を始めてしまった。ふつつか者である。どうかお許しを!という具合に楽しく賑やかに取材が始まった。

神津さんとの出会いは、1993年マヨルカ島で神津さんが勉強していた時の同級生が彼のガールフレンドという、友達の友達はみな友達だの関係のようだ(違っていたらごめんなさい)。

マヨルカ島の光が作り出す特殊な色合いが好きでここに残ると言い、それ以来マヨルカ島に暮らす。
ジョークの好きな陽気な青年。

彼の絵は青の美しさが印象的で、海、水、海中、雲、月、波など自然がいっぱい。


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「青と赤は好きな色です。でも、グリーンとか他にも好きな色はたくさんあります。僕は絵を描く時に心理学的な面から色をみるので、たとえば、青が現すノスタルジーやメランコリックな感じに、パッションを表す赤を加えてみたりとか、そういう色の持つ効果も絵の中に混ぜていきます」

クリスチャンの絵にはそれぞれに詩がつけてある。そのことにふれると

「僕の絵の哲学で言うならば、僕の絵には三つの隠し事があって、それは段階をふんで行くようになっています。最初に見えるもの、それから僕と波長があった人にだけ見えるもの、それからもっと深く分かってくれる人。その三つの層が分かるように導くためのヒントみたいなものが僕の詩なんです。そのフレーズを読みタイトルを読み、より深く入っていくために添えられているものです」

彼のプロフィールにご注目いただきたい。だまし絵。これぞプロのあそびすと。心理学的に、色の効果を考えつつ、理論的に彼の絵の世界に引き込んでいくという巧妙な仕掛けがあるらしい。ちょろっと見るだけでは決してたどりつけない世界を展開しているわけだ。大学2年までは物理と化学を専攻していたという理系の頭の持ち主でもある。

彼の絵は自然を描いているにもかかわらず、実にエロチシズムを感じさせる


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「エロチシズムは、フロイトがほとんどのものをエロチシズムと結びつけたように、人間にとってそれが始まり。起動のようなものだと思う。最近はあまりにも露骨にそれを写真などでただ見せるというような事が流行っているけど、そんなものは少しも新しくもないし面白いとも思わない。単に見せるというのではなく、感性でそれを感じ取れるような作品を描きたい。あくまでも品を失わずに」

彼は日本に来てかなりのカルチャーショックを受けたようだ。しかし、日本で筆をとるということはないのかという問に、あくまでもヨーロッパ人である自分の原点を失わずに活動していきたいということであった。「日本という異文化を、アレハンドロのように家族の中にも日本を感じるものがある人とは違う、まったく先入観がない僕には、また違った日本を吸収できると思う」と言っていた。

クリスチャンの絵はリビングに飾りたい絵だと思った。それは彼がこだわっているという色の美しさ。そして毎日ひょっとしたときにあれっ?と気づく何かがあるなんて!実に素敵。


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今回の取材でお世話になった神津善之介さん、ほんとうにありがとうございました。そして美しい奥さまにもいろいろお世話になりました。すでに日本の画壇で活躍されている神津さんの素晴らしい絵を紹介できないのは残念ですが、個展などで観ていただきたいと思います。彼の凛とした美しい絵は玄関に飾りたい絵でした。

それではMADE IN SPAIN 2006をお楽しみに。


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【プロフィール】
アレンハンドロ・小森
1974年
メキシコシティに生まれる

1993年
スペインアンダルシア地方のセビリアで暮らし、その後マドリッドに

1996年〜1999年
ギジェルモ・ムニョス・ベラ氏主宰の美術学校で学ぶ

1997年
マドリッド サロン・デ・オトーニョ展ARALICO財団賞 受賞

2001年
ベルギー ヨーロッパ芸術アカデミー主催 国際絵画グランプリ 金賞受賞など
Alejandro Komori


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【プロフィール】
クリスチャン・パンコフ
1971年
イタリアマジョーレ湖畔アローナに生まれる祖父は彫刻家、祖母は画家、父は画家で作曲家という芸術家一族。

1990年〜1993年
マットペインティングを得意とし、劇場、テレビの美術効果で評価を得る

1997年〜現在
欧米諸国にて室内装飾用だまし絵を制作し、多くの作品を残す

1994年
スペイン、バルセロ財団主催国際絵画展入賞
Christian Pankoff