エグザイルス

「若いころはヤンチャだったんだ」「ぶっ飛んで時代の先端、行ってたな」
ってな向きの団塊の世代は特に読まれたし。昭和20年代生まれの著者が時代の世相と若者の文化、両者の相関関係を余すところなく語る。
ミュージシャン、ペインターなど、およそ当時前衛と呼ばれたアーティストや若者の支持厚き文芸家の名が引きも切らず登場する。

祖父は船乗り、ロンドン生まれの英国人。なぞの放浪を経て日本にたどり着く。父は長きに渡り、かのラジオ英会話の講師を務めたハリス先生。それだけ聞いても十分「ヒャー、懐かし〜」ではないか。

日英チャンポンをルーツに持つ著者のエグザイル・放浪者っぷりをまずは想像してみる。どんなに想像力を逞しくしても、大方その域を大きくはみ出すだろうと断言する。
時代の先端を行き、最も世相の上空を飛んだ著者が、であるがゆえに何を想い悩み沈潜して、どこにたどり着いたかは表題のとおり。

「すべての道は自分へとつながる」
団塊の世代のみならず、古今東西、老若男女を問わず、それに答えを見い出すことは人生における永遠のテーマにちがいない。その意味において拡大解釈すればはわれわれは皆、人生の放浪者であり、さ迷った挙句、一体全体どれほどの者が「道」を見い出せるのか、それすらなかなかに困難なのだ。

著書が、筆者と同世代のみならず「今の今」の若い世代に熱く支持し続けられる所以なのである。


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作者名:ロバート・ハリス
ジャンル:エッセイ
出版:講談社+α文庫

エグザイルス(講談社プラスアルファ文庫)