なんてこと!!!
最後まで心を痛めながら読了となる。
受け取った感慨を大事に胸に沈めながら、本作が帰結しようとした着地点がどこにあるのか、探し続けたいところ。
手足を動かすことすらままならないハンディキャプトにも「性衝動」はある。当たり前のことながら、改めて突きつけられると返す言葉を失う。自慰行為を手助けする介護介助者の存在。ハンディキャプト専用デリヘル。その時だけは酸素ボンベを外し、命がけで性欲を満足させる…。誇張もなく、肩張ってヒューマニズムに訴えるというのでもなく、淡々とつづられたルポが突き刺さる。
「そこまでヤリタイ」というのは、とりもなおさず「性」が命を支える根源であるということの証なのだと理解しても、人間存在の哀しさをひしひしと感じたとしても、それでもなお、「セックスボランティア」なる概念そのものに疑念は残る。ボランティアとは、そもなんぞや!社会責任、社会福祉が制度として包含し得る範疇はどこまでなのか。
などなど…。理屈はさておいても、「減るモンじゃない」といえるものはない。よしんば、ありそうに見えたとして、誰も「減るモン」をほしがってはいない。人間て案外スタートと究極が一致しているもののようだ。というのが読了直後の感想。
刹那の欲望さえも、置かれた社会状況で恐ろしく変異する。たとえば地雷で手足を吹っ飛ばされた患者の手足切断処置が日常茶飯事の野戦病院、餓死寸前の赤ん坊を抱きしめる虚ろな目をした栄養失調の母親。そこでは「生き延びる」ことだけが全ての欲求なのだ。
しかしながら「だからどーした?!」を受容することも忘れたくはない。それはそれ、これはこれ。要は「比較対象」の問題ではない、ということ。
読後、時間が経つにつれ、対する「感慨」が複雑化し多様化する。ますます是々非々が語れなくなる。
作者名:河合 香織
ジャンル:ルポルタージュ
出版:新潮文庫