笑いのモツ煮こみ

時間を持て余しそうなとき。たとえばルーズな人との待ち合わせ、歯医者さんの待ち時間、美容院や電車の中など、この一冊は最適。退屈しないで済む。難しい理屈抜き、とにかく笑える。
近頃は子どもといわず、おとなも若者もマンガを読む。経済も歴史もシリアスストーリーも、何もかもが漫画化されているけれど、これはその「逆」をいったも の。まさに「書いた」マンガなのだ。読んでいてコマの絵柄を想像してしまう。もっとも、マンガ家としての彼の作品を知る人も多いという事情も、手伝っての ことだが。

職業柄とはいえ、見るもの、聞くものを絵柄に置き換えてとらえ直す習性が、すっかり身についてる作者の観察眼は、なかなか鋭い。外見を的確にとらえて表現すれば、このように内面をも言い当て、その社会的、時代的背景すら表現してしまうのだろう。

世相風刺、人間素描には厳しいものもあるのだが、持ち前の茶目っ気トユーモアセンスでサラリと味付け、どぎつさはない。
むしろ酸いも甘いも噛み分けた人情味には、人間愛を感じさせる。昨今、失われつつあると危ぐされている、体温を伝え合う人間どうしのお付き合いが本の中にみつかる。

とげぬき地蔵で原宿しているおばあちゃんたちの観察『バアチャンとちの原宿』や、男性美容ギフト券(エステ・フルコース)をもらって出かけ、顔面皮に替 わってお肌感覚をもつに到った体験記『男の化粧』、社員を色々な野菜に見立てての人事会議の話『野菜株式会社』のあたりにさしかかったら要注意!外では読 まないこと。

我慢できずに、思わず声を立てて笑ってしまって、周りから白い眼で見られますぞ!!


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作者名:庄司 貞夫
ジャンル:エッセイ?
出版:文春文庫

笑いのモツ煮こみ(文春文庫)