かあちゃん取扱説明書

本書を孫の本棚の隅に見つけて、思わず手に取った。
「もらった図書券でボクが買ったんだ」
「ばあば、持ってって読んでもいいよ」
お言葉に甘えて借りてきて読んだ。

かあちゃんのトリセツ。小学校4年生の子どもの心をとらえて離さない、ついでにばあばの目も惹きつけるユニークな表題だ。その表題もだが、帯の謳い「かあちゃんなんてチョチョイのチョイだ!」には相当惹かれて買ってしまったんだろう孫の心中を思うだけで、にこにこが出てしまう。
「このウイットをわかるなんてさすがアタシの孫。センスいいじゃん」などちょっと自慢したくもなる。

表題の面白さに引けを取らない内容。「くくく」と笑えたり、そのうちシンミリしたり、下手をすれば、あれー? つい目頭が熱くなったり。

大人が読んでも面白い。むしろ大人が読むといい。本著は紛れもないコミュニケーション能力養成法の書としても、よくできている。
事に当たるに、人と接するに、対峙する人、もの、ことのトリセツを編むつもりになって観察するというのは、とりもなおさず進捗を円滑にもつための基本中の基本、第一歩に他ならないと気づかせてくれる。実はいい加減に扱っていい人、もの、ことなどこの世には存在せず、すべてが「要取扱い注意」事項なのだから。

まず何かに当たるにトリセツから入るためには、とりあえずは己を一歩引いたところにおいて対象を客体として見る、ということは引いては「自」「他」の境界をきちんと持ち得るという「自立」の礎に他ならず、自立してこそ対峙する対象と対等なコミュニケーションが取れるというものだ。

ってな屁理屈を余りあるほどに網羅し、それこそわかりやすく説いて見せ、しかも説教臭くもなく押しつけがましくもなく、ウィットとユーモアに溢れている。
これは良書だ。
読み終わって、すぐに「いとうみく」さんの別作を注文した。
それについてはまた、別の時に……

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作者名:いとう みく
絵:佐藤 真紀子
ジャンル:児童図書
出版:童心社

かあちゃん取扱説明書