ラッパを吹きながらお客さんを探す売り子。
1日70本ほど売れるというが本当だろうか?
澄み渡った青空、高らかに囀る小鳥たちの歌声。リマは今、夏真っ盛りだ。そしてどこからともなく聞こえてくる少し気の抜けたラッパの音と共に、今日もアイスクリーム・カーがやって来た。黄色い帽子に黄色いシャツの売り子がラッパを吹きつつ、アイスクリームがぎっしり詰まった保冷庫付きの黄色い三輪車を漕いで街中を回る夏の風物詩。
「プォプォ〜」「プォプォプォ〜」。夕方になると気温がぐっと下がる砂漠性気候のリマでは、日中の暑いうちが勝負だ。彼らの重要なターゲットは公園で寛ぐ家族や子供たちなのだが、リマではそこかしこに公園がある。せっかくの静かな住宅街だというのに、朝からなんと賑やかなことこの上ないが、そのちょっと情けないラッパの音を聞くと、つい窓を開けて黄色い三輪車を探してしまうのだから困ったものだ。ああ、この瞬間もハーメルンの笛吹き男よろしく、売り子のラッパが「プォプォ〜」と私を呼んでいる。
ジェラートのような滑らかさ、
素材の味が生きた 美味しいアイスクリームはいかが?
この手軽に買える庶民的なアイスも捨てがたいが、今回のおすすめは新鮮な果物をふんだん使ったリマの贅沢なアイスクリームだ。アンデスのイメージが強いペルーだが、その国土の6割は果物の種類が豊富なアマゾンの熱帯雨林。りんご、いちご、オレンジ、スイカ、バナナといった日本でもお馴染みのものから、パパイヤ、マンゴーを始め、パッションフルーツの先祖と言われるマラクヤ、インカ時代の神話にも登場するペルー原産のルクマ、世界3大美果の一つチリモヤ、サボテンの実トゥナなど、日本では珍しい果物も数多くある。
これらをたっぷり使ったジェラートタイプのアイスが食べられるのが、Heladeri’aと呼ばれるアイスクリーム専門店。果肉や果汁をたっぷり使い、素材そのものの美味しさを生かした爽やかなフルーツ系アイス、濃厚なバニラやチョコレート、程よい酸味のヨーグルトにナッツやミントのアイスが常時20種類前後揃っている。
この日は雪のように白いチリモヤと若葉色の緑がやさしいピスタチオ、そして酸味のきいた爽やかな味のイチゴとインカの女神をも魅了したというルクマのアイスを選んでみた。
「プォプォ〜」一日中休みなく街を漕ぎまわる。
どれも味が濃厚で、口の中でなめらかに溶けていく感覚が癖になる。色とりどりの味わい深いアイスが舌の上でさわやかに奏でるハーモニーをゆっくりと楽しめる、夏の贅沢なひとときだ。
夕方、「プゥ〜…オォ〜…」と名残惜しそうなラッパの音が遠くで響いた。なぜか郷愁を誘うのは、チャルメラに似た響きのせいだろうか。
Heladeri’aの帰り道、公園の側を通ってみたが、もう黄色い三輪車の姿は見えなかった。リマのチャルメラは子供たちをさらうことなく気の抜けた音を響かせながら、明日もまたこの街に来てくれることだろう。