今年のロンドンは1963年来の寒波だそうで、雪まで積もりました。例年は緯度が北海道と同じくらいなわりにはそんなに寒くならないのですが……。だから交通網などインフラは、ちょっとした雪にもめっぽう弱く、電車や地下鉄のダイヤは乱れ、学校は閉鎖され、凍った水道管が壊れて水が出ない……
材料入ってオーブンへGO!……と、寒々とした気持ちになったところで食べたいもの。日本でいう鍋やおでんの感覚で、イギリスの代表的な冬の料理のひとつがランカシャーホットポットです。
完成!!私が初めて食べたのは、友人宅に招かれたときでした。特にグルメを気取るわけでもない友人が、平日の夜に作ってくれた食事。オーブンから出てきた深鍋には、良い焼き色のついたポテトが敷き詰められていて、その中には湯気のたつラム肉。タマネギとニンジンなど定番の野菜とお湯を加えて、鍋ごとオーブンに2時間ほど入れればできあがり。
友人は「簡単なの。貧乏人の鍋(Poor men’s pot)とも言うのよ」と笑っていましたが、 味付けは 塩こしょうだけ、ラムも骨や脂のついた安い肉でOK。シンプルだからこそ、飽きがこないのです。
さあ食べましょう!!!同様の料理はウェールズ、スコットランド、アイルランドなどの牧羊地域にもありますが、もっとも有名なのがランカシャー州。イングランドの北西部で、イメージとしては「肉体派」。
産業革命の中心地でもあった工業地帯で、スポーツ、特にサッカーが盛んです。かつてはもっと広い地域で、リバプールやマンチェスターも州の一部だったといえば、サッカーへの情熱がうかがわれるというもの。肉体労働やスポーツをした後、家に帰るとかあちゃんがオーブンからドン、っと取り出すのがホットポットでしょうか(どうやら、鍋ごと毛布にくるんで、競馬観戦のお弁当にもするらしい)。ちなみにイングランド北部の男性って、私がダウンジャケットを着ているような寒い日も、マッチョに半袖のシャツで歩き回ってたりします。
そんなわけで洗練とかお洒落とは縁遠く、質実剛健なイギリスらしいともいえる料理です。我が家でもつくってみましたが、家族が何時に帰ってくるかわからなくても、 オーブンに入れておけばホカホカ。英国人の心と体を温める「かあちゃんの味」だなあと実感したのでした。