シャーマンとの出会い、アヤワスカの儀式――ペルー・アマゾンの旅 その2

前回に続き、ペルー・アマゾンの都市、イキトスの滞在記。

100928_02_01.jpg
儀式を行った小屋。
ジャングルの奥にあるため、
夜は完全な闇に包まれる
イキトスに来たらぜひ体験したかったもの、それはアヤワスカの儀式だ。アヤワスカとは南米アマゾン川流域に自生する植物で、その樹皮といくつかの薬草を一緒に煮出した汁を飲むと、強い幻覚作用が得られるという。激しい嘔吐や下痢を伴うが、それにより体内の不浄なもの、ネガティブなものをすべて吐き出し、心身が浄化されるそうだ。また「ビジョン」と呼ばれる幻覚が見え、いわゆる変性意識状態(トランス状態)も体験できるらしい。そんな「聖なる飲み物」を求めて、世界中の若者やヒッピーたちがペルーのアマゾンを訪れる。しかし経験を積んだシャーマン(呪術師)によって正しい手順で執り行なわれなければ、死に至ることもあるという……。

と、少々おどろおどろしく紹介してみたが、どうかご心配なく。アマゾンではシャーマンによる病気治療は今も一般的で、アヤワスカの儀式も様々な治療の一環として行なわれているのだ。せっかくアマゾンに行くのに、本場のシャーマンに会わずして帰れようか。こうしてイキトス滞在2日目の夜、友人とともにアヤワスカの儀式に臨んだ。

100928_02_02.jpg
儀式の前に説明をしてくれたシャーマン。
穏やかで誠実そうな目をした人だった
100928_02_03.jpg
薄いマットとシーツ、
タライとトイレットペーパーが置かれていた
夜9時過ぎ。漆黒の闇の中、懐中電灯片手にジャングルの奥にある儀式用の小屋に行くと、そこには薄っぺらなマットとシーツ、タライとトイレットペーパーが用意されていた。暗闇でも粗相のないよう、タライとトイレットペーパーを手の届く位置に置き換える。そしてシャーマンによるアヤワスカの儀式が始まった……。

結果から言うと、私は合計11回ほど吐いた。心配した下痢はなく、儀式の後1度だけトイレに行っただけだ。しかし物凄い悪寒に襲われ、ひとりがたがたと震えていた。逆流した胃液が気管に入ったため呼吸ができず、危うく窒息しそうになった。

100928_02_04.jpg
アヤワスカの汁にタバコの煙を吹きかけ、
悪霊を払い祈るシャーマン。
この後カメラを置き、儀式に臨んだ
儀式の前半は辛かったが、驚くことにその後はとても穏やかな気持ちになっていた。先ほどの寒さも嘘のように消え、ただ静かに横たわっているだけだった。闇の中で、色とりどりの美しい鳥や花が見える。これはビジョンというより、私が見たいと願ったものが脳裏に浮かんだだけかもしれない。なぜなら私は儀式中ずっと頭が冴えており、それこそ何度吐いたか、シャーマンの歌はどうだったかなど、とてもよく覚えていたのだから。

すべての儀式が終わり、そのまま私は眠りについた。どれほどの時間が過ぎたのだろう。眠っているのに私の意識は周囲の様子をなんとなく察知しており、熟睡したという感はない。しかし朝の目覚めは清々しいほどで、それこそ憑き物が落ちたというくらいすっきりとした気持ちだった。これがいわゆる「浄化」なのだろうか。翌日、友人とこの不思議な体験について話し合ったところ、お互い見たもの、感じたものは違ったが、非常にさっぱりした気分であったことは共通していた。

たった一度の経験でアヤワスカを語ることは難しい。しかしアヤワスカとの出会いを忘れることはないだろう。こうしてまたひとつ、ペルーという国の懐の深さに触れることができたのだった。