Minter Garden とカナダの国旗を
花で表わした花壇「ヴィクトリアのブッチャードガーデンより小さいけど、それに勝るとも劣らないほど美しい庭園がある」と友人に誘われて、8月も半ばを過ぎたある日、友人たちとミンターガーデンという庭園に行きました。ミンターガーデンは、バンクーバーからトランス・カナダ・ハイウェイ1号線を1時間半ぐらい走ったところにある広大な花の庭園。チリワックという、フレーザー川が運んで来た豊かな土壌を生かした農村地帯の中にありました。
華やかなハンギングバスケットに迎えられて、エントランスで入場料を支払い中に入ると、まず花で作られたカナダの国旗とMinter gardenと描かれた花文字の花壇が、目に飛び込んできます。Minter garden の名前の由来は、「世界一美しい庭園」を目指して造ったMinter夫妻の名前からとったもの。
カラフルな花で彩られた花壇庭園内には、その他にも色とりどりの花の花壇が続きます。小道を歩くと、紫・青・ピンクの紫陽花が咲き、またしばらく歩くと、バラ園があり、美しい薔薇の花が清清しい香りを漂わせています。また静かな池には、蓮の花が浮かび、そこに佇むむだけで心が癒されるよう。
庭園を一周した後はランチタイム。平日なので人も少なく、落着いたダイニングで美味しい食事とたわいないおしゃべりを楽しみ、私達は極楽のような時間を過ごしました。
昼食の後、この地域に詳しい友人が「せっかくここまで来たのだから」と、私たちを鮭の遡上と砂金で有名なHell’s Gateというところに案内してくれることになりました。
Hell’s Gateは、トランス ・カナダ・ハイウェイ1号線をチリワックから80分ほど北上したところにありました。ここは、BC州を縦断しているフレーザー川の川幅がもっとも狭いところで、物凄い量の水が幅33mの渓谷を怒涛の勢いで流れているのです。スイス製の空中ケーブルでハイウェイから152mも低い渓谷の対岸に渡り、激流を真下に見ることができる観光名所。広い川が狭い川に流れ込むところなので流れが速く、落ちたらまず助からないことから、この名前がついたそうです。
ハイウェイから下に降りる空中ケーブル
激流の川に架けられた吊り橋空中ケーブルに乗ると、上に登ると思ったケーブルは下に降り、Observation Deck(観測デッキ)に着きました。そこから私たちは激流の川を見下ろすため、つり橋を渡り始めたのですが、足元は金網のようになって、見たくなくても、凄い水量の激流がゴーゴーと音を立てが流れるのが見えるのです。おまけに風は強いし、高所恐怖症の私は恐くて足が前に進みません。橋の半ばまで行って観測デッキに戻ったのですが、対岸にはサケが産卵地へと遡上できるように、スイッチバック式の魚道が設けられていることを、後で知りました。結局、鮭の姿は見られなかったのですが、フレーザー川に沿って汽車の線路があり、長い貨物列車が走っているのが見えました。
鉄道も橋もなかった時代は命がけこの線路は1882年頃カナディアンパシフィック鉄道が敷いたものですが、Hell’s Gateを抜ける建設工事は厳しくて、多くの工事作業員が下を流れる激流の中に落ちてしまったそうです。
それ以前は、砂金と鮭を運ぶために、人々は危険を犯して荷物を背負い、この激流沿いの崖を命がけで伝い歩いたのです。その様子は、観測デッキの展示室で見ることができます。 昔は厳しい大自然の中、命がけで移動するしかなかったHell’s Gate、今は川沿いに汽車が走り、向こう岸に渡るには吊り橋がかけられ、安全に移動できるようになったのです。そして大自然の恐怖が観光の売り物になり、また急な流れを利用してラフティングや魚釣りなどのスポーツを楽しむスポットとして有名になったHell’s Gate。帰りの空中ケーブルから穏やかな景色を見て、今、私たちは良い時代に生きているのだとしみじみ感じたのです。
カナダBC州、フレーザー渓谷への小旅行。天国のようなミンターガーデンで極楽の気分に浸ったあと、地獄への門といわれるHell’s Gateで足がすくむような恐怖感を味わった不思議な1日でした。