鮮やかな蓋碗
写真のこの蓋碗、花や草の絵柄や彩色は、ペルシャや西洋の雰囲気がありますね。中央にはアラビア文字がデーン。中国茶のお碗なのに、イスラムの香りがいっぱい。
蓋碗は中国茶では欠かせない道具。お茶を飲むためにも使いますが、急須代わりにお茶を淹れるのによく使います。
実はこの蓋碗は、西アジアでも、新彊でもなく、北京のモスリム(イスラム教徒)街で買ったもの。
中国の首都、北京にモスリム街?
牛街礼拝寺
北京の南西にある牛街。そのランドマークであるモスク、牛街礼拝寺が建てられたのは996年。千年以上前からモスリムは北京にいたことになります。13世紀に北京に大都を築いたフビライ・ハンが、西域から連れてきた兵士たちを牛街に住まわせたという話も有名な話です。今でも西の雰囲気を持った人や、少し肌が浅黒い人もいれば、すっかり漢民族と同じような顔の人もいますが、モスリムは今も中国で自分たちの信仰を守っています。北京には他に40以上のイスラム教寺院があります。
モスクの周辺には回族の学校や民族用品店があったり、ナンを売る屋台が来たりと、モスリム街らしい風景を見ることができます。
私が蓋碗と出会ったのは、街のお店ではなくて牛街礼拝寺。きっとふんわり丸い屋根の建物と思っていたら、なんと瓦屋根に赤い柱の中華風! これがイスラム教モスク?
しかしその入り口で、やはりモスクであることを認識させられます。半袖半ズボンなど肌の露出の多い衣服を着ている場合は、羽織りや長ズボンを借りて、着用してから中へ入ることが許されるのです。
神聖な金曜日の礼拝
牛街の民族洋品店
礼拝堂は男性専用、女性専用と男女別々になっており、帽子を被った回族と思われる信者たちがいます。お堂も赤い扉に中華風の内装、でも床には絨毯。
イスラム教徒の安息日である金曜日には礼拝が行なわれ、大勢の信者がやってきます。お堂の中に入りきれないほどの人が集まり、外にまでお祈りのスペースを確保する人も。コーランが流れて一斉にお祈りを捧げる姿は、普段は騒がしく、時に無秩序な中国の日常からは考えられない神聖さ。
中央にアラビア文字が入った蓋碗
そしてモスクの中の売店こそが蓋碗を見つけた場所。信者が使う宗教関連の用品に混じって、ペルシャ風のティーセットなども売られています。私は一目で、蓋碗の花の絵柄に引きつけられたのでした。中央に書いてある字の意味もわかりませんが、この中華とイスラム文化が融合したエキゾチックな蓋碗は、今、私のピカピカの宝物です。
ちょっと意外な北京の一面だけど、歴史に彩られた北京ならではの出会い。シルクロードやモンゴル帝国といった雄大な歴史の流れを感じる一品を、あなたも探してみませんか。