【晩春は湖】歌声響くよ、ヴェルター湖

懐かしい湖の思い出をご紹介しましょう。オーストリアでもイタリアに近いケルンテン州にあるヴェルター湖です。周囲50km、総面積19平方km、東西16km、南北1.5kmの東西に細長く広がる小さな湖畔にあるセキルンというところは、ウィーン少年合唱団の合宿所でもあります。

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湖畔のステキな教会でのミサは最高
彼らは夏休みの3週間、空気の澄んだ湖水地方にある専用の施設にて秋からのコンサートツアーのための練習をします。毎日ガンガン歌いまくるだけではありません。大きな草原のような庭、深い森林に囲まれたロケーションは天国です。そしてなんといっても合唱団の持っている専用水泳エリア。私も息子が団員のころ、毎年湖水地方でバカンスをするのが新しい楽しみになりました。

バカンスの地であるヴェルター湖にはドイツ人もたくさんやって来ます。ステキなブティックもあり、美味しいレストランにカフェと飽きることがありません。
夜は湖上のコンサート。大きなステージが作られて、真っ白いセーラー服に身を包まれて歌う少年たち。湖に響く歌声。

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合唱団の合宿所
親は合唱団の寮には住めませんが、歩いても行ける“親専用のペンション”があり、そこが滞在先です。新人の親は特に嬉しさを隠しきれません。私は湖に面した素晴らしい部屋を毎年取ってもらって命の洗濯をしました。夜になると湖は真っ暗で、あれほど開放的でラテン系だった昼とは打って変わって、深くて静かな厳かな存在に一変します。

日曜日の朝は鳥の鳴き声で目がさめ、教会へ行くと少年たちが賛美歌を歌います。一緒に旧友をお連れしましたが、教会で聴くラテン語の賛美歌と重厚なパイプオルガンのズーンと胸の深いところまで響く音色にすっかり参り、私たちは涙してしまいました。

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夕日の湖は特に美しい
4回参加して卒業した時は、もうあの湖には行く事がないかもしれないと思うと寂しさでいっぱいでした。もちろん、湖は永遠に存在しているので簡単に行けますが、私の頭の中ではヴェルター湖と息子のいた合唱団の思い出がワンセットだったのです。
昔を回顧しながら、ペンションのおばあちゃんはまだ健在かしら? 少年たちの寮もリフォームしたのかなと遠い日本から思いを馳せてしまいます。
後輩のウィーン少年合唱団が日本ツアーで5月に来日しましたが、夏にはまた天使の歌声をヴェルター湖に響かせてくれる事でしょう。

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合唱団によるオープンエアーコンサート