朝ご飯といえばイギリス、イギリスといえば朝ご飯。正式な「フル・ブレクファスト」と呼ばれる物ならもう、日本で言う旅館の朝ご飯を超える大ボリュームの上「卵はポーチドですか、スクランブルですか」、「パンは白ですかブラウンですか」云々云々……と尋ねられ、せっかくイギリスに来たからと伝統の朝ご飯を頼んだ旅行者の皆さんをおろおろ(もしくはイライラ?)させてしまうこともあるのではないでしょうか。
こうしたボリュームいっぱい朝ご飯、さすがに家庭の食卓で毎日食べる物ではありません。私も渡英6年、旅行先や「いま無性にあのブレクファストが食べたい!」という折りなど、ちょっと特別な場合に食べると言う具合です。ええ、この特集にかこつけて食べにいくとかネ……。
そんなわけで、私の住むウェールズ地方でご当地ブレクファストをいただいて参りました。
カリカリに焼いたパン、マッシュルームのソテー、ベイクドビーンズ、ポーチドエッグにグリルしたトマト、それからハッシュドポテト。ほとんどはどれも朝ご飯の定番。これにベーコン、ソーセージがつけばどこにでもあるイングリッシュブレクファスト。でも今回食べた朝ご飯はちょっと違うのです。
まず、写真の朝ご飯は「ベジタリアンブレクファスト」なるものだということ。なのでお肉、お魚は一切使われていません。アラじゃあ、真ん中のソーセージみたいなものは何?と言いますと、これはウェールズの伝統料理「グラモーガンソーセージ」です。パン粉にハーブや野菜をまぜ、カーフィリーチーズというウェールズ産のチーズを練り込んだ一品。というわけでこれも立派なベジタリアンメニュー。切ってみるとトロリとチーズが顔を出します。
19世紀中頃に書かれた本にグラモーガンソーセージが言及されていて、そのころはグラモーガンチーズが使われていたのですが今は作られておらず、のちにグラモーガンチーズのレシピを元につくられたカーフィリーチーズに代ったのだとか。日本のソウルフード・おでん(たとえば、よ)にもご当地メニューがあるように、イギリス名物朝ご飯にもこうしてその地方なりの特色や歴史があるんですね。
私はベジタリアン(菜食主義)ではないのですが、このチーズのとろけるふわっとしたソーセージがたまらず好きで、これを食べたさに家から歩いて20歩くらいのカフェへときどきでかけては「ベジタリアン・ブレクファストのSサイズぷりーず?」てな感じで注文します(恐ろしいことに、これよりボリュームアップした通常版がございます)。
朝ご飯の一品としてだけではなく、パーティのおつまみ、ディナーの前の小腹を満たす一品としても最適のグラモーガンソーセージ。ウェールズへお越しの際は伝統の味をぜひどうぞ。