子どものころからオリンピックの時期が来ると、ワクワクドキドキ眠れない夜が続く。オリンピックのときだけは夜更かしが許され、家族で日本人選手を応援する特別なイベントだった。そしていつのころからか、選手たちの活躍やドラマを期待するのはもちろん、街の熱気や人々の熱狂振りを見るのも好きになっていった。
2010年、バンクーバーでの冬季オリンピック。「のんびりしすぎじゃないか、間に合うか?」と、メディアなどでも心配されていた交通網がやっと整備され、選手村も整ったが、オリンピック開始の前日までは「本当にオリンピックが行なわれるのだろうか。盛り上がりに欠けるな……」という静けさだった。テレビで見ていた歴代のオリンピックと何かが違う。これは冬季オリンピックだからだろうか、それともカナダ人の気質なのだろうかと不安になった。
オフィスビルやレストランのウィンドウが、カナダの国旗である赤色と白色に染まり始め、いざ開催日になってみたら、そんな心配はどこ吹く風。多くの人が非日常である世界の大イベントに無我夢中になった。
普段は行列を見ることがあまりないバンクーバーで、街は国旗を掲げる人たちやオリンピックグッズに身を包んだ人たちであふれ、どこもかしこも大行列。金メダルに1分ほど触れるというイベントは3時間以上待ち、ダウンタウンのアトラクションの中には7時間以上待つというイベントもあったが、皆、街で行われているイベントを心から楽しんだ。エンジンがかかるのが遅いと思えたカナダ人のテンションは、一度かかったら、急上昇。給油しなくても長距離を走るということを知った。
始まれば盛り上がります。
アイスホッケー、カナダ男子チームの試合の行方を見守る人たちカナダの街が揺れた日。それは、国技であるアイスホッケーで、男子チームがアメリカ人チームに対し延長戦を制し、金メダルを獲得したときだ。交通機関の乗り物の中で、皆が肩を組んで国家「オー・カナダ」を合唱し一致団結。車も祝福のホーンを鳴らし、皆、朝方まで勝利の美酒に酔いしれた。街を歩けば、見知らぬ人とハイファイブ! もし、金メダルが取れていなかったら、街はどうなっていたのか……と思うと、恐ろしくて仕方がない。
カナダらしいと思った演出方法がある。世界の人たちが注目する開会式、聖火台に点火する大事な場面で、4本の柱で構成される聖火台が、機械の不具合で一本上がらなかったのだ。「なんということでしょう!」と言っている場合ではない。最後のクライマックスで「えっ?マジ??」と、目が点になった人も多かったに違いない。その結果、メディアなどから批判を受けることになったのだが、なんと閉会式では、動かなかった聖火台にピエロがおどけた表情で登場し、コンセントをつなぐパフォーマンスで再点火! 失敗を逆手にとったユニークな方法で失敗をはねのけた(急場をしのいだ?)。その国らしさを見つけるのも、オリンピックの楽しみのひとつ。ロンドンオリンピックでも「イギリスらしさ」を見つけたいと思う。
開会式。一本、柱が立たなかった聖火台……
今ではダウンタウンの観光名所のひとつに。こちらはフルセット(笑)