世界のタワーをたずねて祝・東京スカイツリー開業 !「行かない」と「あって当然」—-横浜マリンタワー

地元の観光名所というのは、思いのほか行ったことがなかったりする。札幌市民だけれども「時計台」に行くつもりで行った、という人はきっとそういない(想像ですが)。「東京スカイツリー」も墨田区業平橋の周辺に住んでいる方よりも、まだまだ遠征してきた観光客のほうが多いはずである。たぶん。
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横浜マリンタワー。氷川丸とともに
「横浜在住です」ということであれば、そんな存在がふたつ思い浮かぶ。
ひとつは「横浜ランドマークタワー」。70階建ての日本一高いビル(296メートル)であり、69階には365度大パノラマの展望フロア『スカイガーデン』がある。しかしここに登ったことのある横浜市民、案外少ない(断言)。筆者はただの一度、それも広島からのお客さんの案内でしか登ったことがない。そのため以前、神奈川県内某市在住の友人に「行ったことないんですか!? 田舎者ですね」と言われたことがある。いやいやそれはむしろ(以下自主規制)。
もうひとつ。
ランドマークタワーが日本一高いビルならば、こちらは世界一高い灯台。「横浜マリンタワー」である(灯台としての働きは08年に終了している)。横浜港開港100周年を記念して造られた灯台兼観光施設であったマリンタワー。1961年の開業から、山下公園エリアの観光地になくてはならない存在として多くの観光客を集めた。中でもエレベーターで上っていく展望フロアや、世界の鳥類が放し飼いにされている鳥類園が人気の施設として、筆者も30年以上前に展望フロアに登り、そして鳥と戯れたのを昨日のことのように覚えている。そしてマリンタワーに登った、いや登るどころか足を踏み入れたのは、それが最後ということも同時によく覚えている(笑)。
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展望フロアからの夜景。左奥に横浜ランドマークタワーの姿も
別にわざわざ行くまでもない、そう思っていたのは「横浜の風景描写なら必ず入っているでしょ」という存在であるからにほかならないのだが、そんなマリンタワーが「営業を終了する」一報が入ったのは2006年末。そうなると勝手なもので「横浜の魂を消す気かっ」などと宣う人間が出てくるのだが(私だ)、運営会社から譲渡された横浜市が再生事業を計画し3年後の2009年、今度は横浜港開港150周年を記念してリニューアルオープンと相成った。

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営業休止前。長いことおなじみだった紅白カラー
そうなったらそうなったで見に行くことも、もちろん(もちろん?)していなかったのだが、この大型連休の際に山下公園などと一緒に訪ねてみた。
以前は雑然としていた感がある入口付近も、芝生とともにモダンな入口となり、改修以前から唯一残った展望フロア以外は、オシャレなレストランやバーがテナントとして入店している。そして紅白に染められていたカラーリングは、もちろん知ってはいたが、銀色に塗り替えられていた。
寂しいとかではまったくないのだが、団地とタワーマンションくらいイメージが変わるもんだね、そう思いながら港の見える丘公園方面へ足を向けた。無論、展望フロアに上がることはおろか、立ち入ることもないままに。
おそらくこれからも筆者が望んで展望フロアに上がったり、中で食事をすることもないだろう。しかしそれは、あって当然、そして無くなるとなったら猛烈な喪失感が襲ってくる、長い居住者にとってすでに何事をも超越した存在だから。札幌の時計台も、きっと同じ。そう確信して山側へ歩を進める。

開港200周年となる2059年、そしてその先も、間違いなくこの場にそびえ立っている。すれ違いざま、港町を行くカップルがその世界一の灯台を見上げていた。
いついかなる時代でも横浜港の、横浜の象徴。それが横浜マリンタワー――