現代プロ野球では見られない? 31年未達成の大記録

明日、10月30日からプロ野球の日本シリーズが開幕する。緒戦、そして2戦目が地上波テレビで全国中継されない(NHK—BS、CSにて放送)というプロ野球ファンには寂しい事態となった今年だが、そんな空気を吹き飛ばす熱戦を期待したい。個人的なことを言えば、千葉ロッテに頑張っていただきたい。ファンクラブ会員だったりするので。

プロ野球の熱戦と言えば、息詰まる投手戦やボコボコ点が入る打撃戦などが思い浮かぶが、その最中に記録がかかってくると俄然、熱さが増してくる。投手で完全試合や無安打無得点(ノーヒット・ノーラン)がかかった場合の9回などなんともソワソワしてしまう。打者の場合でも安打→ニ塁打→三塁打と来た4打席目は、サイクル安打となる本塁打をやっぱり期待してしまうものである(ちなみに、安打から順に本塁打で完成したサイクル安打は、特に「ナチュラル・サイクルヒット」と呼ばれることがある)。


ground_01.jpg
1年前、島田誠がサイクル盗塁を達成した後楽園球場。
いまや球場もなく、日ハムも札幌へ。遠い昔のお話し

ところで、この“サイクル”という記録、打者ではなく走者にも可能性があるのをご存知だろうか。まず一塁走者が二塁へ盗塁。さらに三盗を決め、そして本盗……。同一回に一塁から盗塁だけでホームインしてしまう、これ「サイクル盗塁(連続盗塁)」である。
一概に比較はできないものの、サイクル安打が懸かる打席よりも、サイクル盗塁の本盗のほうがガチガチに警戒されて至難のはずだが、見事にすり抜けて達成した選手は日本プロ野球74年の歴史で16人。とはいっても最新の達成ははるか31年前のことで、1979年6月5日の西武戦で日本ハムの島田誠(今年は横浜ベイスターズヘッドコーチ)が記録したのが最後である。このとき西武の捕手はあの野村克也で、御年45歳だったノムさんは「45歳にもなって恥をかいた。初めての経験や」と試合後に語っている。

クイック投法の確立や、送りバントなど確実な進塁打が重視される現代プロ野球ではもう目撃できなさそうなこのサイクル盗塁。しかし、ファンを魅せるのもまたプロ野球。二盗、三盗を決めた走者が本盗をうかがう、こんなシーンは確実にファンをワクワクさせてくれるはずである。

※補足
日本野球機構によると、プロ野球の各種記録は所属連盟(セントラル野球連盟=セ・リーグ。パシフック野球連盟=パ・リーグ)によって表彰される。各種記録とは首位打者や最多勝利などのシーズン記録のほかに、試合中に達成された記録も含まれる。その際、サイクル安打はセ・リーグでは表彰対象もパ・リーグでは対象外で、これはサイクル盗塁も同様。ということは、31年前、パ・リーグだった島田誠は連盟表彰は受けていないのだった。