私事で恐縮だが、筆者ならびに筆者周辺には、「酔っ払って電車を乗り過ごした」という失敗談がごろごろ転がっている。
筆者の場合、「渋谷から東急東横線に乗り、『代官山』のアナウンスで目を覚ましたら『次は終点・渋谷です』と続いた」初体験以後、自宅周りの電車ではあらかた終点まで流された経験がある。京浜急行の下りで浦賀まで流され、その挙げ句、戻りの上りでやはり終点の品川まで漂流した。気が付いた瞬間、「よかった、“成田空港行き”じゃなくて」と安堵したのを覚えている。
そんなであるから、もし東海道線など長距離在来線、ましてや新幹線で通勤などとなったらいささか恐怖である。「神戸で飲んで、新大阪まで新幹線で帰ろうとしたら新横浜(笑)」なんて経験をした元関西在住の友人の話もある。引っ越しやら転勤やらがないことを祈るばかりだ。
博多南駅。山陽新幹線の施設なので、
JR九州ではなく西日本の管轄です
さて。
こんな「酔っ払って電車に乗っちゃいました」というとき、乗り過ごしの危険性が低いのは“終点まで降りないでいい”というケースである(注・この場合の「乗り過ごし」とは、終点でも気が付かず折り返して反対方向に戻ってしまうのを含む)。もっと言えば、特急券等の運賃とは別料金が必要な場合ならば、終点で必ず乗務員が降車チェックをするので、熟睡していても摘み出される。たとえば東海道新幹線の場合、熱海で飲んでいて東京まで戻るのなら乗り過ごす心配はほぼないと言っていい。それは山陽新幹線の博多でも同じ……
……ではない。
山陽新幹線の終点はもちろん博多である。つまり小倉で飲んで新幹線で博多に帰れば乗り過ごしなしかと当然思うのだが、なんと博多駅終着の一部列車(「こだま」と「ひかりレールスター」)は、そのまま「博多南線」の特急列車として「博多南駅」まで運行されているのだ。
博多南線はもともと新幹線の車両基地への回送線だったのだが、平成2年に旅客線に衣替えし、博多南駅を開業。博多駅から約9キロ南西にあり、開業後に住宅地として発展したことから、いまでは重要な交通手段となっている。なお、全列車が特急の扱いなので、乗車には運賃とは別に特急料金(自由席)100円が必要となる。
JRグループでほかにこのような性質を持った駅には上越新幹線のガーラ湯沢駅(上越線支線扱い)がある。また、東京メトロ千代田線の北綾瀬駅も、博多南駅と同様、回送線から旅客線となって誕生した駅だ。
ちなみに筆者がこの博多南駅の存在を知ったのは、「小倉で飲んで新幹線で帰ると、たいてい博多南にいる」という知人の話からである。やっぱり(笑)。