もうすぐはーるですねぇ、ちょっと気取ってはいないウンチク――春一番

暑さ寒さも彼岸まで
昨秋、お彼岸のウンチクを扱った際にも取り上げた言葉だが、今春も見事にお彼岸の入りから今日の明けに掛けて、首都圏ではめっきり肌寒さが取れてきた。改めて先人の経験には驚かされるばかりだ。暦の上でも体感的にも、季節はもう春。そんな春の訪れを一段と感じさせてくれると言えばやっぱり桜の開花だろうが、その前に気象の上ではこんな現象がある。
春一番
春先に吹く強い風に遭遇し「あれ、これは『春一番』かね?」なんて思っていると、夜に見た気象情報で「今日の東京では『春一番』が吹き……」と報じられている……誰にだってこんな経験があると思うが、実はこの春一番には認定条件がある。基本的には“春先の強い風”というだけでは春一番ではないケースもあるのだ。

春一番の観測を発表している関東以西のエリア、そこの基点となる各地の気象台によって条件は若干異なるのだが、2003年(平成15年)に気象庁が発表した資料での関東地方の基準は以下の通り。

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03年3月3日の天気図(気象庁HP参照)
青森県西部沖にある低気圧(L)に向けて南風が吹き、
関東・北陸地方で春一番を観測した
1.日本海に低気圧がある
日本列島の西部に高気圧、そして東部に低気圧が存在する、いわゆる“西高東低”の気圧配置が冬場の特徴。これが崩れ、日本海=北西方向に低気圧が存在している状況が春の訪れを表している、ということである。

2.東南東から西南西の方向より秒速8メートル以上の風が吹く
1の補足だが、一般的に風は高気圧から低気圧に向かって吹くため、日本海の低気圧に向けて南風が吹くという状況になる。

3.気温が上昇する
文字通り、吹いてきた南風によって気温の上昇が見られる必要がある。

この三つが気象上の条件。これを満たした年明け最初の突風が春一番……でいい気もするが、実はここにもうひとつ条件がある。

4.立春から春分までの間に上記を満たしたもの

そう、時期が限られているのだ。暦の上で春の入口である立春、そしてここから春本番ですよという春分、この約1カ月半の間に吹かないとそれは春一番ではない、ただ“強い風”なのである。

そして今年、関東地方では春一番が12年振りに観測されなかった(近畿地方は2年連続)。関東地方に春一番が吹かなかったのは、記録に残っている1951年(昭和26年)以降、19回目のこととなった。