週末の日曜日には大相撲初場所が千秋楽を迎える。ここ最近、ひとり横綱の白鵬が無人の野をゆく強さを見せ、対照的に大関陣はいないも同然の体たらくであったが、稀勢の里の大関昇進が刺激となったか、今場所は初日から把瑠都が12連勝するなど奮闘している。改めて、千秋楽の結びまで手に汗握る取り組みとなることを期待したい。
さて、今回はそんな大相撲で懸けられている「懸賞」……って、NHKでしか大相撲中継を観ていない方は懸賞の存在自体を知らない可能性もある。まずはそこからおはなしをしよう。
NHKより。
懸賞旗が回る際、NHkでは引きの映像になり、
宣伝となることを避けている「懸賞」とは、大相撲の取組に企業など団体(屋号がある個人商店なども申請可能)が懸ける賞金に該当するもので、1単位(=1本)6万円(ただしその場所中に最低15本の協賛と、懸賞旗の作成が必要)で懸けることができる。ひとつの取組に対し複数の懸賞(複数の団体から懸かる場合はもちろん、ひとつの団体が複数を懸けることも可能)が懸かっている場合も含め、その取組に勝利した力士が総取りする。懸賞が懸かっている取組では、懸けた企業の名称や商品名が書かれた“懸賞旗”が土俵上を回り、同時に場内アナウンスもされることから、公共放送であるNHKでは、これを「宣伝」と判断して土俵から引いた画像にし、アナウンス中は過去の同じ取組の解説などを入れて場内音声を聞きづらくしている。NHKの中継だけでは観たり聞いたりが難しい存在であり、知らない可能性……と書いたのはそのためである。
1本6万円で懸けられた懸賞は、取組表への記載や場内アナウンスなどの事務手数料として日本相撲協会(協会)が5000円を引き、残る5万5000円が勝った力士の懐に入る。ただ、このうち2万5000円は引退後に還付される“納税充当金”として協会が天引きするため、勝利後に渡される現金は3万円。勝ち名乗りの後、行司の軍配の上から手刀とともに受け取る熨斗袋に入っており、多数の懸賞が懸かった取組でとんでもなく分厚くなった熨斗袋の束をわっさと掴む白鵬、そんな映像を観た覚えのある人も多いだろう。
かつては取組に懸けられる懸賞の数に制限はなかったが、05年秋場所千秋楽の結び“朝青龍(元横綱)vs栃東(元大関)”に当時史上最多の49本の懸賞が懸かり、懸賞旗が回りきるまで長時間掛かったことで「緊張感を損なう」と批判を呼び、現在は最多で50本(国技館で行なわれる東京場所は例外で51本になることもある=後述)と規定されている。その後の最多記録は1年後、まったく同じ秋場所の千秋楽の結び“朝青龍vs白鵬”での制限一杯の51本で、このとき勝利した朝青龍はその場で153万円の現金を手にしていたというわけだ。
ちなみに、東京場所のみ最多51本となっているのは、観客が「その日の注目の取組」を投票して懸かる取組が決まる、森永製菓提供の「森永賞」1本分があるため。前述の朝青龍vs白鵬は、マックス50本の懸賞プラス観客も賛同して51本になったのである。