オレの庭から埋蔵金がっ――想定外なおカネのおはなし・その2

江戸幕府末期の御用金360万両が群馬県の赤城山麓に埋蔵されている――。
この伝説の埋蔵金発掘を狙って大々的に赤城山麓を掘り返したテレビ番組がいまとなっては懐かしい。田中信夫の「いま開かれる、黄金の扉っ」などの名ナレーションにも乗せられて心躍ったものだが、その度に気になったこともまたある。時価総額4000億円の埋蔵金、実際に出てきちゃったらどうしたらいいのか、と。

今回はそんな埋蔵金を掘り当ててしまった場合のおはなし。前回の『ニセ札』同様、想定外のおカネがやってきたときの対処法としてご覧ください。

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赤城山ではこんな形の「法馬金(ほうまきん)」が出る説が。
これ、銀行の地図記号のルーツですね
自分の土地でなくても、何気なく掘っていた穴から埋蔵金や財宝が出てきたとする。まず取るべき行動は警察への届け出である。これがもし警察に届出ずにフトコロに入れた場合、刑法254条「占有離脱物横領罪」で1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となる。

届けを受けた警察は発見の日時や場所などを公告し、その間に埋蔵した人物や、物故者ならば相続人が所有者として判明した場合、すべて所有者に返還される。その上で、発見者は時価総額の5〜20%を報労金として受け取る権利が発生する(ただし、発見から1週間以内に届け出ていなかった場合、この権利は消滅する)。

とはいえ、仮に埋蔵者やその相続人が名乗りを上げたとしても、コトはわざわざ埋蔵したもの。それを証明するのは著しく困難であることから、3カ月間の公告終了後、たいていは民法241条に則り発見者に、また発掘された土地の所有者が別の場合は土地の所有者にも発見者と折半で埋蔵金の所有が移る。この際、埋蔵物が文化財と認定された場合は国の所有となるのだが、相当額の報奨金が発見者と土地の所有者に支払われる。

ところで、発見時に届け出なければいけない根拠となっている占有離脱物横領罪とは「ある人物の所有を離れた金品を横領した」場合に問われる罪で、落ちていたお金や盗まれて放置されていた自転車を拝借してしまうのもこれに該当する(所有を離れていない場合は刑法235条「窃盗罪」である)。落とし主が見つかった場合の報労金や見つからなかった場合の手続きなども、これまでに記した場合と同様だ。

つまり、庭から出てきた埋蔵金も財宝も、道で拾った10円玉も、対処に変わりはないのである。