先日のこと。
深夜のコンビニエンスストアでおつりを受け取り、翌朝その500円玉を確認したところ、思わずこんな声が出た。
「うわっ、ニセガネだっ」
いや、よくよく見てみると、09年に発行された今上天皇在位20周年の記念硬貨であり、世が世なら偽物などと言ったら牢屋にブチ込まれる恐れすらあるれっきとした本物。ただ、記念硬貨過ぎて使うのにも躊躇し、また思い切って出してみたところ、「こんな貴重なものは受け取れません」と受け取ってもらえなかったこともある(うっかり他のお金が無かったので、掛になってしまいましたよ)。ここ数日、どうも500円を損した気がしてならない。
某所で見つかったニセ札。
なんかとんでもないことになっております(笑)こんな前フリもないものだが、今回は偽造通貨、いわゆるニセ札のおはなし。
自ら造ってしまうのは論外として、仮にニセ札だと承知していて使ってしまった場合、それも造ったのと同様の罪になる。刑法148条「通貨偽造罪」、同149条「偽造通貨等行使罪」で、偽造または行使した額面の3倍以下の罰金、もしくは科料となる(ちなみに罰金とは1万円以上のものを指す。科料は1万円以下)。偽造の場合、見分けが付かないくらい精巧でなくとも、「通貨と紛らわしいもの」だと判断されれば取り締まりの対象となる。新聞や雑誌に通貨が掲載される場合に「見本」と入っていることや、コピー機などの禁止事項に「(国内外を問わず)通貨をコピーすること」とあるのはこのためだ。
では、もしニセ札を手にしてしまった場合はどうしたらいいのか。日本の中央銀行たる日本銀行に持ち込めば真贋を鑑定してくれるが、万が一ニセ札でも本物と替えてくれることはない。では掴まされたほうの泣き寝入りか、というとそういうこともなく、極めて普通の対処だが警察に届けると「偽造通貨発見届け出者に対する協力謝金制度」により額面と同程度の“捜査協力の謝礼金”が支払われる。これ、交換ではなく捜査協力の謝礼なのがポイントで、すでに解決済みのニセ札事件の場合は泣き寝入りという結果となる。また、この制度は紙幣のみを対象としており、一時期大量に出回った500円硬貨などは対象外である。
なお、この「偽造通貨発見届け出者に対する協力謝金制度」が制定されたのは77年のことで、それ以前は総泣き寝入りという状態だった。そのためニセ札とわかっていても使ってしまう事態が多発したことから制定に至ったということである。まあ、使っちゃう気持ちはわかりますわね(笑)。