暑さ寒さも……「お彼岸」の謎

毎年、秋分の日と春分の日を挟んだ前後3日間にやってくる「お彼岸」。残暑の厳しい折、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉が思い浮かぶが、9月15日現在の天気予報によると、今年はお彼岸の入り日である20日から見事に気温が下がる様子。昼夜の時間が同じになるこの時期が夏から秋、冬から春の変わり目という先人の経験則は素晴らしいのひとことである。

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秋のお彼岸の時期に咲くのがヒガンバナ。
春はボタンなどが花を付けますね
お墓参りに出かける人も多いだろうこの「お彼岸」。そもそもどんな日なのか、というのが今回のおはなし。

「彼岸」とは仏教用語で「煩悩を脱した悟りの境地」のことで、それに対して「煩悩に満ちあふれた反対側の岸」を「此岸(しがん)」という。この対比でおわかりのとおり、“この世”が此岸、“あの世”が彼岸ということである。
そして、秋分・春分を「中日(ちゅうにち)」としてお墓参りをしたりするのは「彼岸会(ひがんえ)」という仏事であり、文字通り彼岸にいる仏様に会いに行く、想いを馳せる時期とされている。

それではなぜ、秋分・春分に彼岸会を行なうのか。秋分・春分は昼夜の時間が同じ、つまり太陽が真東から昇って真西に沈む日であり、極楽浄土は彼方の西方(西方浄土)にあるとされていたことから、真西に沈む太陽を拝むことで彼岸により近づく、というところから生まれたのである。

これまで記したように、「彼岸会」とは仏教や浄土思想からの行事ではあるが、日本以外で仏教に縁が深い国では特に行事化されている例はない。日本独自の“祖先を偲ぶ行事”として、現在では信仰宗派に関わらずに存在していると言ってもいいだろう。ちなみに、歴史上最初に「彼岸会」が登場するのは806年、早良親王を偲んだものだと『日本後記』にはある。

※次回は9月30日の掲載です