別に今回に限った話ではない、いや、今回どころか毎回同じなのであるが、今日は週末前の金曜日。“ハナキン”である。今週もお疲れさまとばかりに夜の街に繰り出す御仁も多いと思われるが、そんな時に気になるのは帰る時間だ。
徒歩圏内、もしくは飲まないから自家用車で、なんて向きは安心だが、電車で帰るとなると終電の時間を気にしておく必要がまずある。そして幸い電車に乗れたとしても、そこで油断をしてはいけない。なにせ酒が入った状態である。気が付けば下車駅から遙か遠くまで乗り過ごしていったという経験、誰にでもあるのではないだろうか。以前にはこれほどまでの例を記したこともあるし。
今回はそんな「電車乗り過ごし」のおはなし。
まずはこんな状況を想定しよう。
まもなく終電。
お乗り過ごしにご用心
「あなたはJR東京からJR川崎まで帰るべく東海道線に乗り込んだが、うっかりJR横浜まで乗り過ごしてしまった。幸運にも東京方面への電車が残っていたので、引き返して川崎で下車した」
では問題。この状況で必要になる正しい運賃はいくらだろうか。なお、JR東京→JR川崎は290円である。
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答えは290円……なんてことは問題にした段階からもちろんありえない。正解は660円なのである。
この場合、本来の目的地は川崎だが、そこを通過して戻る場合は降りた横浜が最初の下車駅とされるのだ。仮に横浜駅で同じJR線内の横須賀線に乗り換えるのであれば引き続き乗車中と考えるのだが、引き返す場合はいわゆる“途中下車”をしたことになり、ひとまず乗車は終了する。そのうえで川崎に戻る場合は横浜から再び乗車したとみなされ、JR東京→JR横浜=450円とJR横浜→JR川崎=210円を合わせた金額となる。たとえば「A駅から電車に乗り、B駅の改札内にある“エキナカ施設”を利用してA駅に帰る」というような場合も、往復の料金が必要だ。
これは法律などではなくJR東日本での規定を基に記しているが、営業利益で私鉄最大手となる東急電鉄でも同様の規定があることから、鉄道運輸業界では統一的な規定と考えて差し支えないだろう。
A駅→B駅のエキナカ→A駅のようなケースは、行きのA駅で買った切符やIC乗車券だと帰りのA駅を出場できない(自動改札が開かない、などで)ので捕捉が可能だが、乗り過ごしで戻ってきた場合は正規運賃を徴収するのはなかなか難しい(この場合は自動改札も開く)。それだけに「目的を持って降りた最初の下車駅で乗車終了、という規定と同時に“誤乗車には事情を勘案して便宜を図ってもいい”という規定もあります」(JR東日本)として救済をしている。つまり悪質なケース(エキナカのケースにて入場券で往復するなど意図的なもの)を除けば現実的に適用されない、されづらいルール(ある私鉄では「『そのまま改札出ちゃダメなんですけれども……』としか申し上げられませんよね(笑)」とのことでした)ではあるのだが、盲点のルールとして頭の片隅に置きつつ、ゆめゆめ乗り過ごすことのないようお祈りいたします。
なお、この乗車ルールにちょっと関係してくる旅のご提案があるのだが、それはお盆の時期にでも改めて。