7月19日、午後の2時過ぎに室堂に到着。
下界のうだるような暑さがウソのように涼やかな風が渡っていく。それもそのはず、まだかなり大きな雪斜面が残っていて、驚いたことに、かけ声などしながらスキーの練習をしている。どこかの大学か何かのサークルなのかもしれない。
雪の消えた土面には植物が萌え出し、立山に春夏がいっぺんに来ようとしていると告げている。室堂山荘にチェックインして、草花散歩の押さえどころなど指南してもらって、のんびりあたりの散策にでかけた。
室堂平一帯は今や花盛りだった。硫黄成分が強いのか、みくりヶ池は不思議な青緑色をたたえて空の白い雲を写し、斜面に解け残る雪がいつまでも池面の水を冷たく保ち、あくまでも澄みわたっている。見下ろす遊歩道はハイマツなどのブッシュ下に花期を迎えたゴゼンタチバナやエゾシオガマ、ヨツバシオガマ、ハクサンイチゲ、チングルマなどが花をそろえ、見渡せばコバイケイソウやクロクモソウや他たくさんの高山植物が次々に咲く準備をしている。
それらを心行くまで見て歩いた。
「こんな時間がいつかもあったな!」「さて、いつだっけ?!」
歩いているうちにふと、そうして草花に心躍らせているたった今のシーンに既視感を覚えた。一昨年の同じ頃、白山と剱岳に登った時に見かけた同じ種の草花たちだったのだ。あれから、もう2年も経つなんて!
昨年はその同じ花期を迎える頃には1ヶ月の入院の後、ようやく退院してもう1ヶ月の自宅療養期間に入っていた。
モンブラン登山を2ヵ月後に控えた2009年5月17日。ボルダリングジムで練習中に落下して第2腰椎を骨折してしまったのだ。
幸い後遺症は皆無だったが安静生活は極度の低血圧、低体温を招き、体力低下は想像以上に著しかった。9月にようやく入院後初めての登山が硫黄岳・八ヶ岳だった。10月には初クライミング。小川山だった。心もとなく、不安でいっぱいだった。
そんなこと、すっかり忘れてた!
4月に「モンブラン登山」に向けて、ガイドの本郷さんについてトレーニングを本格化させてからというもの、一向に目覚しい成果が得られず、自らの不甲斐なさに押しつぶされそうになるあまり、何か大事なことを置き忘れてきたような気がする。
今こうして頑張っていられることの如何にありがたいことか!それを思えば、頑張ることのストレスなど、それさえ「元気に生きていればこそ」の証ではないか!
散歩から山荘に戻り、ゆっくりお風呂に入ったりしていたら明日の龍王岳・東尾根を一緒にやる「Oさん」がやってきた。
食堂入り口前の自販機脇でプシューッと開けた缶ビールの旨かったこと!
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