再準備と言ってから時間が無為に過ぎた。
9月13日に退院後初のクライミング練習で城山にでかけ、さて「じゃんじゃん、やりまっせ」と意気が上がったと思ったら、せっかくのシルバーウィークは田舎の法事ごとで丸つぶれ。ようやく2回目のクライミング練習に出かけられたのが9月27日になった。
城ガ崎はなんどか練習に参加しているが、このゲレンデは初めて。高い岩壁に挟まれた小さな海っぺり。なかなかステキなロケーション。左右の岩壁上間には吊り橋が架かっていて、どうやらハイキングコースの一部になっているようだ。
大森さんがやんちゃっ子みたいに小石を拾って投げると、そこらの岩に当って跳ね返るんだが、ひとつ当って跳ねた石がまた次の石に当って跳ねる、そしてまた次の石に当って跳ね返される。平べったい石が水面を滑走しながら2度3度となく飛んでいくのと同じような感じ。ごろごろ転がる小ぶりな石や岩がみな潮に洗われて、すっかり角が取れてしまっているので、球体接点が回転を生むらしい。
「ここはクラックの練習にいいんだよ」
なんとも、見るからに手ごわそうな岩の面構え。設置された4本のルートのうち、とてもじゃないが到底無理なのは、はなからスルー。技術もだが、明らかに筋力を要求される。
「確かに腕力も必要だね」
大森さんが攀じっているのを見れば、筋力と技術は決して別のものではなく、筋力に裏打ちされた技術もあると納得する。結局、スクール生の誰一人として当日の最難関を制覇し得た者はいなかった。
とりあえず最もできそうなのからトライ。
大森さんにジャミングを教わる。クラックは岩壁に沿ってほぼ下から上まで続いている。割れ幅がうんと細い箇所は、指を真っ直ぐにそろえて伸ばしてクラックに差し込み、指先の腹と手のひらで岩面を抑える。幾分広がっている時は親指だけ手のひら側に折り込む。
さらに広がっている場合は、拳を作って縦にねじ込む。それでもまだ幅が開くなら手首をひねって拳を横にする。
「イッテーッ!!!」
拳をねじったら手の甲の皮がむけた。血が出た。ヤッダーッ!!!
即ギブ。
1度降りて指間接、手の甲にしっかりテーピングしてから再挑戦。なんとか上がれた。
バンザイ。
調子に乗ってちょっと難しそうなのに挑戦。あえなく敗退。
拳はしっかり利いているのに、それで体を引き上げようとすると、一定以上体が上がったとたんにそれまで拳にかかっていた体重が逃げる。ジャミングは拳より体が下方にあって、拳に体重がかかっている時のみ有効なのだ。引き上げると同時に次の1手をつかまなければならない。瞬発力が必要なのだ。
天気は上々。海の照り返しも手伝って暑いこと!何もしなくても疲れる。
そこへ以って、降りてきたら脚も腕もブルブルのがくがく。もうしばらく何もデケン!
わずかな日陰に入り、真っ先にお昼。コンビニで買ってきたタコヤキ。旨い。
満腹したら猛烈な倦怠感。角の取れた丸い岩ころと岩ころの間に体がアンバイよく入るるところに横になったら岩ころと同化したかに秒殺、意識不明。
午後はもう1本「できそう」ルートに挑戦。
吊り橋の上にハイカーが立ち止まって見物を決め込んでいる。ギャラリーのまえで「おばちゃんでもできまっせ」アピールする気は満々なんだが、できそうで、できない。頭の奥のほうでは確かに「できる」とささやいているんだが、ダメ。ちぇッ。
「まだまだ本調子じゃないんだね」「だんだん戻るよ」
慰めてもらって素直に「うん」とは言ったが内心、次に同じゲレンデに来た時は「必ずやっちゃる」と密かに決意。
悔しいーッ!!!
*用語説明
【クラック】crack(英)Kamin・カミン(独)
割れ目。体の入らない狭い岩の裂けめ。拳、肘がはいるくらいのもの。Kamin[暖炉、煙突]。フリークライミングでは、指が入るか入らないくらいのものから体が入るものまですべてをクラックという。
【ジャミング】jamming(英)・ジャム
クライミングで、岩の割れ目に体の一部を挟み込んで体を支える技術。jamming[ぎっしり詰め込む]
靴または足をクラックに差し込んで固定するものを【フットジャム】、手を差し込んで膨らませたり捻ったりするものを【ハンドジャム】という。さらに、指を使うのは【フィンガージャム】、拳を使うのは【フィストジャム】という。fist[拳固]
参考:http://www.sunfield.ne.jp/~tkubota/yougo/
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