友よ-4

5月31日
外出許可をもらって友の顔を見にいくことにした。友人が車を出してくれ、友の娘も一緒に行くことになった。

玄関先に友の娘の姿をみつけて、思わず抱きついてしまった。
「大変な思いさせちゃったね?」
娘は私の肩をトントンしながらそう言った。ずっとずっと胸を痛くしていただろうに、むしろ私がいたわってもらっている。
「うんうん」私はせめて肩を抱き返すことしかできなかった。

ICUのベッドに横たわった友は、もはや自発呼吸をしていなかった。規則正しくシュパーン、シュパーンと音を立てる呼吸器の無機質な音につれて、薄い寝具をかけられた胸元が上下する。
目の前の友の状態を物語る状況は、それでも「なんで?」の問いに少しも説明を与えるものではなく、呼吸器につながる管さえなければ、ただ深く眠っているように見える友をゆすり起こして訊きたいと思った。
悲しいとか涙がこぼれるとか、そういうことではなく「わけがわからん」それしかなかった。

「どう声をかけてあげたらいいのかね?」
友人は友の顔をなでながら言った。

「もうね、ありがとう、いろいろって、それだけ…」と娘は言ったけど、頭を、頬をなでながら、やはり「どうしたッ?なぜ、こんなことになったのよ?」と訊いてしまう。温かくてやわらかい手を握れば「わけがわかんないよう」と嘆いてしまう。

帰り際に布団を少しめくってみた。
自然に足を投げ出せば大概はつま先は外側を向く。お行儀よく内側を向いた友の足先をのぞきこんで、思わず3人で笑い交わした。
「やっぱりつま先が内側に向いてるね~」
「ほんと~」

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