2月22日
吹っ飛ばされそうになりながら、ほうほうの態でたどり着いた山頂小屋。
よーく写真に目を凝らせば、暴風に雪氷のつぶてが吹き上げられ、横殴りの地吹雪状態になっているのが見て取れる。
もちろん、小屋は閉鎖。
「夏に来た時は、あったかいコーヒー飲のんだのにな〜 」
まったく、ため息が出ちゃうぜ。
屈強なオノコらも、さすがにヤレヤレ。写真を撮ったり。
これまた不思議な現象。写真で見ると晴れてるのよね。
かなりの遠景の山々が延々、連なっているのが見渡せるとは、帰宅後PCで画像チェックして初めて確認した。
当のわれわれには「晴れている」感は全くなかった。地吹雪があんまりスゴイので、まるで降雪の中にいるような錯覚を起こしていたのだ。
しばしの休憩の後、山頂へ。
でハプニング!
こっそり周辺の山だの、三角点の標識だのを撮っていたら、つい、いい具合にフレーミングしようと少し身体を反らした。そんな意識もあまりなかったんだが、それがいけなかった。
風にあおられて、ドテンと後ろへこけた。
「よけいなモン、しまってッ!!!」
「スス・スイマセ〜ン!!!」
怒られたのなんの。
いや、実際、平たいところでこけたからよかったものの、こけた先が谷斜面だったりしたら…
「落ちたら、最初っからいなかったことにするから」
なんて、なんでもなかったから、後で冗談話しにもなったが。
とにかく寒いというより「痛い」状況で、登頂の喜びに浸っているどころではなく、数分の後に下山開始。
これがまた、エライこってすわ。
頂上直下の文三郎尾根の切り立った岩稜帯は凍結あり積雪ありで、下山というよりクライムダウンな感じで、コ・コ・コワイ〜!!!
「ハイタガー」だ「ロータガー」だなんて専門用語を知らなくても、生命保存の本能がピッケルの使い道を教えてくれる。
ようやく岩稜帯を抜けると、今度は深い雪溜まりの傾斜のキツイ降り。
どうやら、登頂で体力・筋力を使い果たしたらしく、腿がわらわらして堪えられない。
もー、やだーッ!!!
「カカトから足つかない!」「雪面に平行に!」
つったって、分かっててもでけんがな〜
積雪した斜面はむしろフラットフィッティング(雪面と平行に足を下ろす)で、スルリスルリと滑りながら降りなければならない。
が、すっかり腿にきてしまって、スルリとスルリの間の瞬間のストッパーが効かなくなってしまっているから、怖くてフラットに足が出せない。
恐怖が身体を後ろに倒す。そうなると当然、カカトから足を出す。
ズバンと雪にはまる。一足ずつそんなことをしていると、前後のメンバーと進む速度が合わない。
ザイルが張りっぱなしになる。引っ張られ過ぎるとなお怖い。もう、悪循環。
ようやく、なだらかな斜面に降りたときにはフラフラ。
ザイルを解き、ピッケルを片付け
「さあ、ここからは1本道だから、まあそぞろ歩けばいいよ」
なんて言われても、ストックに寄りかかるように、ようやっと歩く。
行者小屋から赤岳鉱泉、そして美濃戸口まで、メンバーはアイゼンを外してラクチン歩きだったが、雪道、凍結道をノーアイゼンで歩く筋力は到底なく、最後までガシガシいわせながら、やっとの思いの下山だった。
2899mの赤岳の降りでこんな体たらくじゃあ、モンブランなんてゼッテー無理だよ。
モンブランは赤岳より2000mも高いんだぞーッ!
どーすんだーッ!!!