桜通りを登る息も白い季節から、桜の4月、そして真夏とさまざまな人々が通り過ぎていく桜丘。歴史が息づきつつ新しい出会いも多い街として、当コーナーでも驚くほどの老舗からニューフェイスまでさまざまな人々が登場してきたが、今回はとびきり老舗のイタリアンへお邪魔してみよう。
桜通りを麓から見上げたとき、“左側”はこれまでにも『鳥金』、『マルイ堂』に『マンダラ』、そして『NALU』などが登場している。今回は初となる“右側”からのご登場、坂をほとんど登らないところにある『trattoria bel mare(トラットリア・ベルマーレ)』がその店だ。
迎えてくれたのは席に着いた様子も絵になる(上の写真をご注目)紳士、ここ『trattoria bel mare』と『bel mare caffe』(渋谷区文化センター大和田内。近日登場予定!)の代表取締役社長を務める木津秀幸さん。
オープンして37年、代々で料理人というわけではなく木津さんからbel mareの歴史が始まる。
「私、学生時代は理系なんですね。化学のほうだったのですが。つまり“創り出す”のが好きだったんです。で、その当時にいろいろと食事をします。日本で食べる中華料理や、フランス料理というのは『完成しているのかな』と感じていたのですが、イタリア料理だけは当時まだ遅れている、ほとんど完成していないと思いまして。それで、日本のイタリア料理を創り出してやろうと思ったのですね。それが始まりです」(木津さん)
その想いで開店し、いまやランチからおやつどき、そしてディナーと客足が絶えることのない名店となったbel mare。
「ウチより長いお店といったらそれこそ『一品香』さんとか『三漁洞』さんになりますかね……あ、一品香さんは私のことなんか言ってなかった? 悪いオヤジだとか(笑)。ハハハ」(木津さん)
店内の客層も親子連れや学生、会社関係とさまざまだが、そこでの応対には木津さん流のこんなこだわりも。
「たとえば、まだ小さなお子さんの親子連れ。親御さんが『何飲む? じゃあオレンジジュースを』なんて言うと、それダメですよ、って(笑)。小さいお子さんでもレストランなんですから、自分で注文してもらいます。あと携帯ゲームとかもダメね(笑)。食事をしに来ているという常識……ってほどでもないですよね、当たり前のことをしていただきたいんですね。あとデートだとしても隣同士じゃなくて向かい合わせに座ってもらいますよ(笑)」
bel mareルールですねえ、そう笑う木津さんだが、料理以外でもそんなこだわりが長きに渡って営業をし、かつ世代を超えて愛される秘訣であることは間違いない。
bel mareの社長というだけでなく、実は桜丘の街づくりにも深く関わっている木津さん。
「これからもまだまだよくしていきたいですね。桜丘も店も」
雨だった取材日、雨に煙る愛する街を、愛する店から暖かく見つめていた。
Q・あなたにとって桜丘とは?
「まだまだ、これからも頑張っていく街ですね」
ランチ時、ディナー時と多くのお客さんで賑わう店内。
おひとりさまのお客さんも多いですよ。どうぞお気軽に
アンティークな調度品がところ狭しと。
酒飲みは右下のセラーの中が気になりますね(笑)
さ、いただきましょうか。こちらスズキのカルパッチョ(1500円)。スズキがオイルの海を泳ぎ回っております。白身のカルパッチョっておいしいよね。白ワインと合わせたいところです
天使の海老のタリオリーニ(1600円)。天使の海老ってフランスが定めた最高品質の海老ちゃん、そしてタリオリーニってスパゲティより細いパスタですね。これを酸味の利いたトマトとマスカルポーネのソースで召し上がれ
食後はデザートいきましょうか。パンナコッタとカボチャのプリン、そしてズコットの三種盛りです。ズコットってのは帽子をかぶせたようなケーキですよ。ちなみにこれ400円。デザート単品でも400円。さ、あなたは盛り合わせ派? それともおひとつ派?
ワインはプラネタのシラー、白ワインでいかがでしょう。こちら7500円。ボトルワインはシラー以外にもお手軽価格で揃っておりますよ
【今回の桜な人々】
trattoria bel mare
代表取締役社長 木津 秀幸さん
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町24-2(マップ)
ホームページ
http://www.belmare.jp/