ロンドンのパブで路上で、そして日本全国で歌い続けた「萩原大介」。2010年、1st.ミニアルバム『風景の唄』をリリース後も精力的にライブ活動を展開し、この2013年2月に待望の2nd.ミニアルバム『希望の唄』を世に送り出した。
その音楽の原点は、そしてもちろん『希望の唄』の聴きどころを伝えるべく、萩原大介ドーンとあそびすとに初登場!
――萩原さんが音楽に携わるようになったきっかけはなんでしょうか?
萩原●もともと小さなころから歌を歌うのが好きだった、らしいですね(笑)。自分の記憶にはないくらい小さなころからでして、テープを流してひとりで一生懸命に歌っていたらしいです。
――ご家族の証言ですね。
萩原●直接のきっかけとしては中学のころに初めてビートルズのアルバム、『リボルバー』というのを買いまして、それを聴いてメロディーの良さであったり……憧れがありまして、自分でギターを弾いたり歌ってみたりしたこと、でしょうね。
――中学生のころにビートルズや洋楽というのは、まさに一度は通る道ですよね。
萩原●そうかもしれませんね(笑)。その前はとんねるずとか……自分で買ったいちばん古いCDシングルはとんねるずの『情けねえ』でした。まあさすがにとんねるずを聴いて音楽をやりたいとは思いませんでしたが(笑)、その後にロックと言われるような音楽を聴くようになりましたね。
――時代的に90年前後ですかね。
萩原●そうですね。チャゲ&アスカなどが流行っていた時代でしたが、若気の至りなんですが「ロックじゃねえな……」なんて思っておりました。いや、いまとなってはすごいアーティストなのはわかるのですが(笑)。個人的にはユニコーンがいいなあと思いながら、邦楽から洋楽まで割と幅広く聴いていましたよ。ちなみに最初にコピーバンドを組んだのはユニコーンのコピーバンドだったんですよ。
――はい。ドンドン音楽生活が近づいてきましたね。
萩原●最初はドラムを叩いていたのですが、奥田民生がすごい好きだったことからギターを買って。やるからにはうまくなりたいと練習して、曲も作ってみたいな、じゃあ自分で歌って……って流れですね。
――ギターの練習をされてから曲を作り出すまでというのは早かったのですか?
萩原●早かったですね。これはオタク気質なのかもしれないのですけれども、コード進行を分析したりするのが楽しくなっちゃったんですよ。「このコードからこう展開するとこうなるのかっ」なんて考えながら弾き語りをしてみたりして。このときの経験はもちろん今に活きていると思いますよ。
ロンドン行き、そして1st.アルバム『風景の唄』
――萩原さんは音楽のためにイギリスはロンドンに渡られていますね。
萩原●はい。
――まずはその動機を教えてください。
萩原●そうですね……バンド活動を結局7年間やったのですが、その間に一回は海外に行ってみるのもいいな……って思っていたんです。ただ、バンドを継続していると、ライブもけっこうやれていましたから、あまりスケジュールが空けられないのですね。で、どうしようか……と思っていましたら、残念ではあるのですが解散することになりまして。それならばこのタイミングで行ってみるか……というのがきっかけでしたね。
――ではロンドンを選んだ理由ですが……。
萩原●イギリス、ロンドンを選んだのはやはりビートルズに憧れがあったからと、音楽好きの友達とよく「新しい音楽はイギリスから出てくることが多い」なんて話をしていたんですね。まあ、単純にロンドンの街並みが好きだったこともあります(笑)。
――音楽活動としてはどのような活動をされていたのでしょう。
萩原●ちょっと調べてみましたら、向こうには“オープンマイク”というのがあるんです。ライブハウスなどの会場にその日いきなり行って、歌いたい人はサインをするだけで順番に1曲ずつ歌うことができる。ロンドンのパブみたいなところなんですけれど、そこで歌っていました。あとはやっぱりストリートライブですね。
――それで歌いながらロンドンで生活をされていたわけですね。
萩原●日本人の方が大きな家に住んでおられていて、そこの部屋を貸しているというのが当時、多かったんですよ。そこで日本の方とルームシェアをしていました。ただ、僕の場合はビザが観光ビザでして、働けないのでお金は貯金を切り崩したりしながらでしたし、ビザの期間も短いですから帰らなきゃいけないのですよね。行って戻って……という形でした。……あ、最初に入国審査で止められたりしましたよ(笑)。
――えっ?(笑)
萩原●観光ビザなのにギターを持ってましたからね。「コイツ、カネを稼ぎに来たんじゃないか?」というわけです。英語もほとんど話せませんし……基本的に「コイツは入国させたくない」という目を審査官はしていましたね(笑)。それで、ロンドンで住まわせてくれる方に電話をしてみたのですけれど、たまたま電話に出られなくて、ますます怪しくなってしまいました。
――あらららら。
萩原●次は別室に連れて行かれたんですが、そこで電話が繋がりましてね。やっと開放された……なんてのもいい思い出ですね(ニッコリ)。
――それでイギリスでの活動、生活を終えて日本に帰ってきて以後ですが……20歳代も半ばになってくると、周りの同級生などが“フツーの人”として生活したりしてますよね。
萩原●ははは、そうですね(笑)。
――実体験としてフリーライターなんかにしてもそうなんですが、そういうフツーの友人を見たりして焦ったりしませんでしたか。
萩原●いや、焦ったりはしませんでしたけどね。音楽を続けるかどうかはバンドを解散するときに考えたのですけれども、止めてもなにも変わらないだろうな、というのが自分の中にありまして……結局、続けても続けなくても変わらないとしたら、それは止めたくないなって単純に考えました。それと、バンドとひとりでやるのは全然違いますからね。ひとりでどこまでやれるのかを試してみたい気持ちもありましたね。まあ、たしかに周りの目はイロイロありますけれど(笑)、ははは。
――さて、それで2010年になりますが、前作となります1st.ミニアルバム『風景の唄』がリリースされました。
萩原●はい、ありがとうございます。
――バンドの時に作られていたCDとはまた違う、萩原大介ソロとしてのアルバムが出たときというのはどういう心境でしたでしょう。
萩原●そうですね……たとえば今回の2nd.ミニアルバムというのはタワーレコードさんにも協力していただいたおかげで販売特典があったりもするのですが、当時はやっぱり無名人のデビューアルバムですからね。世間の目は冷たかったです(笑)。
――はああああ。
萩原●特にCD自体の売上が下がっていた時期でもあったのですが、ショップに行ってもCDが置いてなかったりしましてね。「売ってないんだけど……」なんて言われて精神的に落ち込みました(笑)。あるショップを覗きに行ったら、ちょうど同じころに日本デビューした少女時代の立て看板の下にちょこんとあったりして(笑)。「なんじゃこの子たちは……」と思っていたら、半年後には誰でも知っているアイドルになっていましたね。ただもちろん、CDという形になったのは嬉しかったですし、家族も喜んでいましたけどね。やはりバンド名より自分の子供の名前で出ているほうが嬉しいようですね(笑)。
「一冊の小説のような一枚」――『希望の唄』
――そんな雌伏の時も経まして、今回2nd.ミニアルバム『希望の唄』がリリースされました。
萩原●ありがとうございます(ニッコリ)。
――“風景”から“希望”が生まれてきたわけですが、ズバリうかがいます。この『希望の唄』の聴きどころはどこになりますでしょうか。
萩原●はい。この曲!という言い方はちょっと難しいのですけれど……僕は吉本興業運営のブログで短編小説を書いておりまして、その小説というのは曲の世界を題材にしているんです。今回収録されている曲も小説になっていたりするのですが、「1曲聴く」という行為は5分くらいで終わってしまいますけれど、その中に物語やストーリー性をいかに持たすか、それが今回のアルバムのテーマなんです。全曲聴き終えた後に、一冊の小説を読んだ、ショートフィルムを見終えたような、そんな気分になっていただいたら嬉しいと思います。
――『希望の唄』を聴かせていただいて、萩原さんのメロウな歌声に合わせて歌詞をたどると、たしかにドラマ性を感じましたね。情景が浮かんできますと言いますか……。
萩原●どうもありがとうございます。
――短編小説を書かれているのをうかがうと、そこは合点ですね。収録8曲目、エンディングを飾る『空』という曲などは、ボイスレコーダーに吹き込まれた曲で、まさに物語を紡いでいる情景でした。
萩原●『空』は本当にギターを弾きながら曲をちょっとずつ作っていっている様子が収録されていますね。ほとんどは曲が先にできまして、そこに詞を乗せていっています。これは僕の場合は普遍的なものですね。
――2曲目の『君への手紙』が推曲として挙げられています。こちらは今回では唯一、萩原さんではなくプロデューサーの長沢ヒロさんの作曲です。
萩原●そうですね。長沢ヒロさんは前作でも少し関わっていただいたんですが、そのときに僕とヒロさんは価値観が近いのかな、と感じまして。アレンジのチョイスなどすごくリンクする部分が多かったんです。それでもっとしっかり関わっていただいて作りたいな……と思っていたんです。今回はいい意味で『風景の唄』と差別化できたのかな、と思っています。
――ライナーノーツを拝見していると、長沢さんと議論を闘わせて完成したことがうかがえますね。
萩原●そうですね。ディスカッションはけっこう重ねましたね。萩原大介というアーティストを客観的に見ていただけているのはありがたいと思いましたね。
――アーティストとプロデューサーとがガッチリ組んだ1枚、『希望の唄』は希望が広がりますね。
萩原●ははは、ありがとうございます。『希望の唄』、ぜひ聴いてみてください。よろしくお願いいたします。
――大ヒット、それと短編小説の映像化も期待しております。吉本さん、よろしくお願いいたします(笑)。
萩原●えっ(笑)。はい、そちらもよろしくお願いいたします(ニッコリ)。