東京都港区白金台の美容サロン『Prospect Hair Design』。ギャラリーとしての顔をもつそのスペースにて、6月４日（月）、現在開催中の加東和作品展 「水無月の女神たち」のオープニングパーティが開催された。そのパーティ当日にギャラリー開設までのストーリーを『Prospect Hair Design』オーナー・渡部幹也氏に話を聞いた。
★子供のころはカメラマンになりたかった
小さいころから、自分で購入したカメラで撮影をしていました。写真を撮ることが好きな少年時代でしたね。本気でカメラマンになることを意識したのは、ロバート・キャパ、一ノ瀬泰造のテレビ番組を見たころからです。戦場カメラマンという仕事を知って、憧れた時期がありました。でも、カメラマンになることは、親に猛反対されてしまった。どうしても上京して写真学校に通いたかったので、たまたま親戚が東京で美容室を経営していたこともあり、美容師になることも夢で東京で勉強したいと嘘をついて東京に出てきました（笑）。美容の仕事をしながらお金を貯めて写真学校に行こうと思っていました。しかし、当時の私の給料では、お金も貯まるわけもなく何時になったら写真学校に行けるのかと、毎日モヤモヤした気分で生活をしていました。もちろん写真は趣味として撮っていましたけどね。当時は、写真学校で勉強しないとカメラマンになれないと思っていたんですよ。
★美容業界の変化によって写真とのつながりができた
人と接することが苦手で、美容室で働き始めたころは毎日辞めようと思っていました。何年か経って、そういったことも克服し美容師を悪くないなぁと思い始めたころに美容業界がガラッと変わったんです。以前の美容業界では、美容コンテストが主流で、早さやカット技術を競ったコンテストをしていました。それが、ヘア写真を撮影してコンテストをするという形に変わってきました。そこで“ガチッ”ときましたね！ だったら自分で写真を撮って、それを応募しようと。自分の写真を生かせて、美容師としてのキャリアもあがる、そんな面白い時期が来ました。独学でライティング等をマスターして撮影を始め、だんだんと進めていくうちに、ヘア写真というカテゴリーからアート作品としての写真を撮影するようになりました。
ギャラリーを借りて、個展を開いた時期が4年ほどありました。また、美容雑誌などにも掲載されるようになり、カメラマンとしての達成感や美容師としての自信がつきました。
『Japan Hairdressing Awards』出品作品
★趣味の美術館めぐりが、サロンのコンセプトに
独立を考え始めたころに「どんな美容室にしたいのか？」って想像したときに、もともと美術館やギャラリーめぐりをすることが趣味で、その館内の椅子でウトウトと居眠りをすることが好きだったし、ギャラリーで作品展をするなどの経験もあり、そんなギャラリーのような空間で美容室ができたらいいなぁ〜と。鏡と椅子があれば、どこでもカットできるんじゃないかって考えました。「じゃあ、ギャラリーにしちゃおう！」と、ギャラリーの中に鏡と椅子があるというイメージでお店を作りました。最初に来店されるお客さまは「ここ、美容室なの？」って、驚かれますね。一見、美容室っぽくない空間にしたかった。普通は入口にシャンプー剤をおいて、あちらこちらにヘア写真を飾って、当然鏡がありますよね。それらをすべて削除して、お客様自身がギャラリーの中でカットされている気分になっていただければという思いから、考えた店内です。鏡を倒してテーブルにすると作品が現れ、鏡が見えなくなることで、ギャラリーとしての空間が現れます。
★ギャラリーとして新たなる展開へ
最初は自分の撮影した作品を展示していましたけど、飽きてきてしまったんですよ。もともとギャラリー貸しをしたかったということもあり、現在の1カ月ごとに作品を入れ替えるというスタイルになりました。あるときアーティストの方から、ギャラリー空間といってもカットされているお客様がいる中で、自分の作品のみを観に来られるお客さまは呼びづらいので、オープニングパーティを開きたいと頼まれました。作品のみを観に来られても大丈夫なのですが、やはり入りづらいでしょうね……。もともと髪を切るだけのお店じゃなく、いろいろな人が集う場所にしたかったので、じゃあパーティを開いて人を集めようってことになりました。それが、今回のライブペインティング・イベントにまで発展しています。
加東和「水無月の女神たち」ライブペインティング・イベントより無料貸しということもあってか8年間、今まで途切れずに続いています。アーティストがアーティストを呼ぶという感じで、プロの方から、アマチュア、学生まで幅広く利用していただいています。カットに来られたお客様から展示中の作品が欲しいという声もあり、お売りすることもあります。
これまで私は写真で作品を制作していましたが、今は動画に興味があります。髪の動きの面白さやカットの行程、出来上がった作品を360度いろいろな角度から見ることができたり、別のヘアスタイルになったりと動画でしか表現できないことにチャレンジしてみたいですね。また、ヘアデザインとまったく違ったモノをコラボさせてみたい。たとえば、車だったり飛行機だったり……。いろいろと幅広くできるんじゃないかと、クリエイティブな映像表現をしていきたいですね。その作品をこのスペースで上映して、さらに斬新な空
間にしていきたい。お店の名前の『Prospect』は「見通しが良い」という意味がありますけど、実は71年にドイツで開催されたアンディ・ウォーホルなどが参加したアートイベント『Prospect』の名前から付けたんです。お客様やスタッフ、またアーティストの方など美意識の高い人が集まる場所でありたいなって思いで名付けました。
加東和「水無月の女神たち」ライブペインティング・イベントより
■プロフィール
渡部幹也（kanya Watanabe）
1970年 福島県会津若松市生まれ
1990年 モガ・インターナショナル株式会社（ETON CROP／青山）入社、北川忠夫氏に師事。「しんびよう」「百日草」など業界紙で活躍またカット講師・ヘアーショーを国内・海外にて行う
2002年 Japan Hair Dressing Award (JHA) ライジングスター ファイナリスト
2003年 JHA 東京エリア ファイナリスト
2004年 白金台に『Prospect Hair Design』をオープン
2006年 美容雑誌 百日草4月号「未来のボブ?」に作品掲載。同誌にコラム「デザインへの扉」を１年間掲載
2007年 同誌10月号「デザインを進化させる」に作品掲載
2008年 美容雑誌Shinbiyo 12月号「美容と共に歩む人生」にて、インタビュー掲載
2010年 恵比寿ビューティーカレッジ（美容専門学校）非常勤講師/フォトジェニック（デザインからフォトセッションまで）担当。Shinbiyo 3月号「ハードパーマの可能性」に作品掲載。同誌 6月号「Eyes on Designer’s WORK」に作品掲載
2011年 Shinbiyo 2月号「ニューボブ」デザインバリエ20 に作品掲載
■Prospect（プロスぺクト）
東京都港区白金台4-9-18 バルビゾン32 3F
Tel：03-3445-1550 E-mail:mail@prospect-hd.com
HP：http://prospect-hd.com/index.html
定休日：毎週火曜日・月曜日（不定） 詳細はこちら
＊当日のご予約はお電話ください
■加東和作品展 「水無月の女神たち」 2012年6月
天から水が無くなるほど 地上に命を育む水が降り続く６月
慈悲あふれる 女神の姿を描いた 作品展
▼ライブペインティング・イベント前に加東和氏に話をきいた。
今回は美容室ということでモデルさんを募集し、その方のカット・メイクと同時進行で、『光の肖像画』を大きなガラス面に描くというコラボをします。その人の内にある存在、その方の正体を肖像画として描きます。
もともとは、商業美術の仕事をさせていただいていたのですが、デパートで開運ということをテーマに正月用の干支など縁起物をモチーフに作品展をしていました。お客さまのリクエストを受けてその場で作品を描くということもありまして、そのことが一番、感動と共感を与えることができるんだなって思い、それをより進めるにはどうしたらよいのか？それが今の活動のきっかけですね。
ここ何年間は、その人の内在神、光の存在、そういうものを感じとって絵を描いています。
■プロフィール
加東和（Nagomu Kato）
1959年 東京生まれ
1983年 法政大学社会学部卒業
2006年1月より
「独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園」絵画クラブ講師
私は目には見えない世界を目に見えるように表現する画家です。
私は生命力に溢れる線を描くために、下書きをしないで一気に腕を動かし、音楽に合わせ、まるで踊るように描きます。
開運をテーマに、新宿伊勢丹・銀座松屋・日本橋高島屋など日本各地のデパート等で100回以上の作品展を開催してまいりました。
現在もブログでは真の開運とは何か？というテーマで試行錯誤しながら、ほぼ毎日作品を更新しています。宜しかったらおつきあいください！
