メリル・ストリープが圧倒的な演技力で<鉄の女>マーガレット・サッチャーの栄光と挫折を演じ切る人間ドラマ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』が、3月16日(金)より本邦公開を開始。それに先立って本作で第84回アカデミー賞主演女優賞を見事受賞した主演のメリル・ストリープとフィリダ・ロイド監督が来日し、3月7日(火)、ザ・リッツ・カールトン「グランドボールルーム」で記者会見が行なわれた。
Q:ご挨拶をお願いします。
ロイド監督:(日本語で)おはよー、ございまーす! 来日することができ、とても光栄です。
メリル:おはようございます。日本にこの映画をもって来られたということを誇りに思っています。
Q:役作りで苦労したことは?
メリル:私はアメリカ人ですから英国にとってはアウトサイダーなんです。その私が英国で愛され、また憎まれた女性(サッチャー)を演じるということと、ほとんどの方が知らない、お歳を召されてからの彼女の日常、この二つを融合させることが難しかったですね。
Q:マーガレット・サッチャーの女性としての魅力は?
メリル:首相になっても女らしさを失わなかったということ。もちろん政治家であり、男社会で生きるわけですから、女らしさを捨てたいという誘惑はあったと思いますが、けっして捨てなかった。ハンドバックを持ち、キラキラしたブラウスを着ていました。でも、涙や笑いなど女の弱々しいところは見せなかった。そういうことから『鉄の女』という名前が付いたんだと思います。
監督:彼女は決して自分の出身を忘れなかった。大勢の中でも一般の人々とも非常に共感を持って接していたし、そういう普通の人の気持ちが分かるということが魅力的だったと思います。
Q:サッチャーを演じて、やりにくくはなかったですか?
メリル:まだ、ご存命のかたを演じるということには責任を感じますね。実在の人物を演じるときには、正確であること、真実に近い役作りをしていくことです。彼女の人生に自分を重ね合わせられるような演技をしたかった。伝記というと成功した部分を中心にとりあげますが、この作品は彼女の日常をみつめていて、そういったところがこの作品を興味深くしている。自分自身を学ぶ機会をいただきましたし、また、親の世代のことも学べました。
Q:撮影の中で、こだわられたところや難しかったシーンは?
監督:メリルにこの質問をしたら、撮影最初の3日間と言うでしょうね。時間が限られているということもあって、いちばん難しいシーンを最初に撮ったんです。その彼女が党内で信頼を失っていくシーンは、メリルの素晴らしい想像力と、ギリギリのところまでの加減をわかった演技をもったとしても、その部分がいちばん難しかったと思います。
メリル:記憶や物事が交互に進んで行くそういったストーリーで、本当は信頼する大臣たちが初共演の俳優さんたちだったので、その部分を想像しながら演じるところのさじ加減が難しかったですね。
Q:アカデミー賞を受賞されたメイクアップの方とは30年以上のお付き合いとうかがいましたが、撮影中のエピソードを教えてください。
メリル:メイクアップのロイ・ヘランドと英国出身のプラスチックの特殊メイクのマーク・クーリアと2人で担当してもらいました。縫い目がないぐらいぴったり合わせてサッチャーのメイクを作っていきました。サッチャーの40年の歳月をこの二人で作りました。ロイとは私が演劇学校を出たばかりのころからの付き合いです。彼はキャラクターをつくるということに重きをおいてメイクを作る方です。とてもユニークなアーティストです。初めてサッチャーになった自分の顔を見た時は、知った人がいるなという感じでした(笑)。晩年の顔は父とサッチャーさんをミックスしたような……(笑)。
Q:最後にメッセージをお願いします。
メリル:日本に来られて嬉しいです。何度も訪れたい国です。この作品を楽しんでいただけることを望んでいます。
監督:英国人のためではなく世界中の人に普遍性のある作品を作りたいと思いました。「老齢」という、歳をとることについての映画というものは難しいですが、ぜひ何か感じとっていただければと思います。
そして、フォトセッション後にヒット祈願の鏡開きが行なわれ、メリルは樽に指を入れて味見を!
とても楽しい雰囲気の中、来日記者会見は幕を閉じた。
監督:フィリダ・ロイド
脚本:アビ・モーガン
出演:メリル・ストリープ/ジム・ブロードベント/アレキサンドラ・ローチ/ハリー・ロイド/オリヴィア・コールマン
配給:GAGA
公開:3月16日(金)、TOHOシネマズ日劇 ほか全国ロードショー
公式HP:http://ironlady.gaga.ne.jp
シネマピア映画レビュー:『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
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