第101回 洋楽編 JAKE E. LEE――熱狂、沈黙。そして復活【ジェイク祭り開催中】

さて、今回も連載100回記念として、俺のフェイヴァリットギタリストのジェイク・E・リーを紹介します! たった一回じゃ紹介しきれない魅力を持った男なのですよ、ジェイクという人は。


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オジーのバンドに加入後、一躍トップギタリストになったジェイクは、二作目の『罪と罰』でも名実ともにオジーの片腕としてアルバム作りに貢献、『罪と罰  』は全米6位と大ヒットを記録する。しかしツアー終了後にジェイクはバンドを解雇されてしまう……。オジーはインタビューでジェイク解雇の理由をあれこれと語っていたけど、俺の印象としては、結局はウマが合わなかったのかな、という感じ。当時のオジーはアルコールやドラッグの問題を抱えていて、『罪と罰』に関しては制作時の記憶があまりなく、ジェイク主導で作られた楽曲も気に入っていないという発言もあった。確かに、オジーにしてはかなりLAメタル寄りのサウンドで、ジェイクのカラーのほうがよく出ているとは言えるけど、それはあなたがボロボロだったからでしょ、と思ったのは俺だけじゃないはず。ただ、ジェイク自身も、オジーとの間には音楽的なケミストリーがあっても、兄弟のような仲にはなれなかったし、オジーには合わないような曲も書いていたから、解雇されたことは双方にとって良かったと最近のインタビューで語っている。より自分らしい音楽を追及するバンドが組めたし、オジーにはザック・ワイルドのほうが合っている、と。オジーのことも悪くは言っていない。寡黙なジェイクと陽気なオジーは合わなかったのかもね。

それでも、ジェイクと親交のある方に聞いたところによると、ジェイクは幾許かのお金で著作権を放棄させられたうえで解雇されるなどの酷い仕打ちにショックを受けて、それ以来しらふでいたことがないとのこと。(アル中の)オジーみたいになりたくないって言ってたのに……。実は一作目のレコーディング後に、ジェイクは、すべてオジーが作曲した事にするという契約書にサインをさせられたという。ジェイクや他のメンバーも大きな貢献をしているのに、だ。ただ、これはオジーではなく、オジーの奥さんで敏腕マネージャーのシャロン・オズボーンの指示らしい。そんなこともあって、二作目のアルバムではレコーディング前に作曲のクレジットを得る契約をしたみたいけど、それまで放棄させられちゃったんだね……。


『Killer Of Giants〜Jake’s Guitar Solo』
オジー時代の楽曲でジェイクが一番誇りを感じているという曲。
後半のジェイクだけのギターソロではオジーがジェイクに乱暴します。
でも、ジェイクによるとオジーは痛くないようにやっていたよ、とのこと(笑)。
そう聞くとなんだか微笑ましく見えてくる……

オジーのバンドを辞めてからはWHITESNAKEなどのビッグネームから誘いがあったそうだけど、ジェイクは新たに自身のバンドBADLANDS  を結成(詳しくは次回)。しかし、BADLANDSは三枚のアルバムを残しただけで解散、その後一枚のソロアルバム  を発表するも、それ以降ジェイクは17年もの長い間、シーンから姿を消してしまう。企画もののアルバム  を発表したりもしたけど、表舞台にはまったく出て来ていない。そしてこの間、ヘロイン中毒になっているという噂が立ったりもした。そのうちニュースが入ってこなくなり、俺はもう、かつてのバンドメイト、ロビン・クロスビー(RATT、02年死去)みたいにならないで、と祈るしかなくて。

ジェイクという人は、あれだけの才能とスター性を持っていながら、スポットライトを好まず、売れることよりも自身の音楽を追求することを選ぶという。騒がれることも嫌いなんだろう。ロックスターとしての華やかな暮らしよりも、心静かに過ごすことを選んだのかもしれない。でも、あのジェイク・E・リーだぞ! 隠居するには早過ぎる! と、ずっと情報を捜し続けていたんだけど、2〜3年前に、ローカルバンドでプレイするジェイクの姿をYouTubeで見つけた。楽しくやれたらそれでいいんだよ、というジェイクの声が聞こえてきそうな動画だったけど、ジェイクがやるべきレベルのバンドじゃない。動画を観ながらいろんな意味で涙が出てきて、困ってしまった。


『Shot In The Dark』
ジェイクが友人たちと組んでいた3DAY CRASHというバンドらしい。
小さなバーで酔っ払いを前に演奏するジェイクを見た時は泣けてきました。
動くジェイクを久しぶりに見られて嬉しくもあったんだけどね

それでも去年、急にジェイクのニュースが次々と届くようになり、ついに新しいバンド  でのアルバム発表がアナウンスされる。それだけでも信じられないのに、なんと、ギタークリニックのために来日するという! 狂喜乱舞してすぐさまチケットを予約したら、整理番号が1番だった(笑)。当日、20年以上ぶりに生で見たジェイクはさすがにちょっと老けていたし、酔ってたけど(苦笑)、元気そうで一安心。弾き方が以前にくらべて少し荒くなっていても、キレのあるプレイは健在だったし、何よりもギターを弾くジェイクの姿が目の前で見られて本当に嬉しかった。泣きそうになったよ。そしてその後、12月には無事アルバムも発売され、今年の7月には新しいバンドで日本にまたやってくる! 信じられない。忙しくなるとまたいなくなるんじゃないかと不安になるけど(苦笑)、これからはもっとあなたの音楽を聴かせてほしい。ソウルフルでスリリングなギターがたまらなく好きです。おかえりなさい、ジェイク!


『Bark At The Moon』
オジー時代のジェイクの代表曲をライヴバージョンで。カ、カッコいい……

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/