第99回 ギターというお仕事編 ライヴサポート――突然呼ばれて20曲、その苦闘と興奮

少しずつ暖かくなってきたと思ったら、さっそく花粉が飛んでるらしいですね……。さて、今回はちょっと趣向を変えて、俺が経験したギターを弾く仕事について書いてみます。まあ、一口にギターの仕事と言ってもライヴとかレコーディングとかいろいろあるわけですが、今回はライヴに絞ってご紹介……さらにそのライヴの中でも、アーティストのサポートでギターを弾いた時のことをいくつかお話ししますよう。アーティスト名は公表すると差し障りがあるかもしれないので、基本的には伏せておきますね。


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今回はikkieがサポートギターを務めた際のおはなし。
カッコいい1枚をどうぞ

俺が最初にやったライヴサポートはなんと当て振り。……あれ、ギター弾いてないぞ。ある女性アーティストのバックバンドだったんだけど、最初は当て振りだって知らなくてね、弾いてる振りでいいと言われた時はさすがに戸惑いました。PV撮影とかじゃなくてライヴだったし、しかも大きなホールで東京と名古屋の2公演。アーティスト自身はもちろん生で歌うんだけど、それってどうなのかな……と。まあ、弾かなくていいなら気が楽だと開き直って楽しんじゃったけどね。ただ、東京でのライヴ中にバックのテープが止まっちゃった時は焦った(笑)。それでも、主役の女性アーティストは慌てず騒がず、まったく音を外さずにアカペラで歌いきり、そのピンチをあたかも演出かのように見せたのは流石でした。お客さんにも俺らが当て振りだったとはバレてなかったみたい。いいのかな(笑)。まあ、俺はダンサーだったと思えば……あれ、ギターの仕事じゃないぞ。

もちろん生演奏もありますよ! 俺が中学生のころから活動してる男性アーティストで……この人は名前出してもいいかな。GRASS VALLEY REV  で活動していた出口雅之 さんが当時やっていたSUICIDE SPORTS CAR  に、1ツアーの間、参加しました。名前も曲も知ってたから、初めて会った時は緊張したなあ。ただ、誘われた時点でライヴ当日まで一週間もなかった(苦笑)。初回のリハーサルまでも三日ぐらい。やっぱり不安はあったけど、それでも断る理由なんてひとつもない。リハーサルまでほぼ徹夜で10曲ほどコピーして、なんとかライヴも乗り切りました。で、このバンドは元々ギターがいなくて、もらった曲にもほとんどギターが入ってなかったんだよね。譜面がなかったから耳で鍵盤のコード拾って、ギターのアレンジも考えて。だいぶ苦戦しました。曲もジャズやラテン系のアレンジだったりして、俺には馴染みがなかったし。しかも、出口さんにわからないコードを聞いても「知らない」って言うんだよ(笑)! 自分で作曲してるのに。……天才肌の人ってこうなんですよ。このバンドでの経験は本当に勉強になりました。周りが凄腕ミュージシャンばっかりだったから、ついて行くだけで精一杯だったけど、少しは上達したと思う。


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歌もの女性アーティストのバックで弾いた時は、SUICIDE SPORTS CAR以上に大変なスケジュールでした。この時もリハーサルの四日前ぐらいに曲を受け取ったんだけど、今度は曲数が倍の20曲。加えて、HR/HMばっかり弾いてきた俺には未知の領域の歌ものアレンジの楽曲。HR/HMじゃ絶対に使わないオーギュメントなんてコードが出て来たりして、指がぱっと動いてくれないんだよね。そんなわけで、またもほとんど寝ずに必死で全曲をコピーしました。なかなか覚えられなくてリハーサルもライヴも冷や汗かきまくり……。でもね、俺なんてこのライヴひとつでひーひー言ってたのに、他のメンバーは同じ時期にふたつもみっつも仕事かかえてて、明日のライヴは50曲! とか言ってた。プロのミュージシャンって、皆さんの想像の10倍は凄いです。タフだし……俺はまだまだ。でも、本番は満員のお客さん(1000人ぐらい?)の前でギター弾いて興奮したなあ。

ところで、なんでそんなに急なオファーばっかりなの? と不思議に思う人もいますよね。今回書いたのに限って言うと、急に出られなくなった誰かの代わりでした。当然、早い時期からのオファーの場合もあるんだけど、俺レベルだと急なのばっかり。ベテランや売れっ子と違って、早く押さえておかなくても空いてるし(笑)。まあ、そろそろベテランと呼ばれなきゃまずい歳なんだけど、プロとしての経験値はまだまだ新人(苦笑)、急なオファーに応えられてなんぼ、です。やれるでしょ、ってオファーくれるんだし、やれなきゃ仕事はない。そして、次は誰かの代わりじゃなく、「アイツが良い」と呼んでもらえるように頑張るのだ。

なんだか苦労自慢みたいになっちゃったけど、ギターを弾く仕事は楽しいです。何が楽しいって、凄いミュージシャン達と演奏することが楽しい。CDで聴いてた歌声が、自分のすぐ隣から聴こえてくる瞬間なんて鳥肌ものだよ。凄いミュージシャン達と凄い演奏をして、お客さんが喜んでくれる。それが何より楽しくて幸せです。いい仕事だなあ。

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/