第28回 バンド編改め洋楽編 NIGHT RANGERと書いて「最高のライヴバンド」と読む

さて、今回は先日来日公演を終えたばかりのバンド、「NIGHT RANGER」をご紹介します!

NIGHT RANGERも、今まで紹介してきたいくつかのバンド同様、80年代に大人気を博し、武道館公演までやったバンドでしたが、今は正直なところ「まだやってるの?」と思ってる人も多いかもしれません。実際、一時期は解散状態にあったし、メンバーの交代劇もあり、それぞれのソロ活動も活発であったことから、NIGHT RANGERの活動状況はここ日本にまではあまり届いてきませんでした。

ところがどっこい! 実は彼らは地道に世界中をツアーし、2007年にはオリジナルアルバムとしては9年ぶりとなる『HOLE IN THE SUN 』をリリース、日本にもやってきてくれたのです。
中学時代から彼らの楽曲に魅せられていた俺は、意気揚々とライヴを観に行きました。エンターテインメント精神あふれるパフォーマンス、アメリカン・ロックらしい爽やかさと躍動感、そして彼らの別の一面でもある切ないバラード……それが以前と変わらない素晴らしい技術で演奏され、それを目の当たりにした俺の感動といったら!改めて彼らの魅力を再確認し、しばらくは“NIGHT RANGER漬け”と言っても過言ではないほど、NIGHT RANGERばっかり聴いていました。あ、翌年も来日してくれたので、もちろん観に行きましたよ。

NightRanger_03.jpg NIGHT RANGERは1982年にデビュー、本国アメリカはもちろん、ここ日本でも大人気でした。ハードかつメロディアスなギターに、ポップなヴォーカル、センチメンタルなバラード……なんて書くと、単なるアメリカン・ロックに思われちゃうかもしれないけど、このバンドがそうではなかったのは、やはり、ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソン(ジェフは現在脱退)、この二人のギタリストの存在が大きいでしょう。
リードギタリストが二人いるバンドというのは、別に珍しくないけど、二人ともが時代を代表するようなギターヒーローだった、なんてバンドはNIGHT RANGER以外にはいなかった。もちろん、大ヒットしたのは楽曲全体が素晴らしかったからこそですが。

ブラッドはトレモロ・アームという、音程を変化させるバーを自由自在にあやつり、トリッキーかつメロディアスなフレーズを奏で、そのプレイはギタリストでなくとも、一発で彼だとわかるという超個性的なギタリスト。一方のジェフは、複雑なピッキングでの速弾き(俺、今でも弾けません)、そして見た目にもインパクト大のエイト・フィンガー奏法(右手の指も使ったプレイ)で一世を風靡。
先に書いたように、楽曲全体に魅力があったからこそ、の大ヒットだったわけだけど、この二人が楽曲に華を添えていたのは間違いないはず。当時のギター雑誌なんかでもよく表紙になっていたし、80年代、俺が中学・高校のころ、ギターキッズはみんな彼らに憧れたものでした。

ところがところが……アメリカ人というのは、アーティストは素晴らしいのに、レコード会社にはバカが多いのか、バラード『SISTER CHRISTIAN 』が大ヒットしてしまったために、バンドにバラードヒットばかりを望むようになるのです。もちろんバラードも彼らの魅力のひとつ。それでも、バンドはそんな状況に嫌気が差し、ついには解散してしまうのです……。

その後もそれぞれがいろんな場所で活躍していましたが、近年はNIGHT RANGERとしての活動が目立ってきています。それぞれの活動も、それはそれで興味深いものだったけど、俺にとってはやっぱりNIGHT RANGERが一番!

そして、今年も『SOMEWHERE IN CALIFORNIA 』という、全盛期を彷彿とさせる素晴らしいアルバムを引っさげ、来日してくれました! 俺は6月14日のC.C.レモンホールに参戦。言うまでもなく、震災の後です。雑誌のインタヴューによると、やはり来日に対する反対の意見もあったそう。それでも、親日家として知られる彼らは、「こんな時期に日本に行けるのは光栄なことだ」とまで言ってくれて、ライヴでも震災について触れていました。
そして「たとえ短い時間でも、一緒に楽しく過ごそう!」と。その言葉通り、信じられないほどの楽しいライヴで、客席も常に大合唱! 時にはステージの音が聴こえなくなるほどの歌声にメンバーもとても嬉しそうでした。個人的には、隣の席の女性が涙ぐんでいたのがとても印象的だったなあ。そう、楽しいだけでなく感動的なライヴでしたよ。

「明日はコペンハーゲンに飛んで、それからヨーロッパツアー。……その後はまた日本に来るよ」なんて言っていたので、今回見逃した方はぜひ! NIGHT RANGERは見逃すには惜しすぎる、最高のライヴバンドですから。

最後に、彼らのハードサイドとソフトサイドの両方から一曲ずつ紹介! 楽しんでね。