ブロードバンドの普及率に伴い、誰しもが気軽にインターネットを楽しめる時代となった。当サイトを今ご覧頂いているということは、今まさに読者であるあなたがインターネットを利用しているということでもある。テレビやラジオなどの受動的媒体とは異なり、インターネットは得たい情報を能動的に取得する媒体だ。すなわち、見たい、知りたいという“意志”がない限り、対象にはたどり着くことができない。本作はその“意志”を巧みに利用した犯罪サスペンスだ。
FBIサイバー捜査官(ダイアン・レイン)はある日、「kill with me(一緒に殺そう).com」と名付けられた公開殺人サイトの捜査を依頼される。そのサイトには、アクセス数が上がれば上がるほど被害者が死に至るまでの時間が早まるという仕掛けが施されていた。殺人の回を重ねるごとにそのサイトの認知度は高まり、アクセス数も飛躍的に伸び上がる。それは被害者が命を落とすまでの時間が更に短くなることを意味していた。「サイトを見ないように」という注意喚起は逆に人々の好奇心を刺激し、被害者の死期を早める。ジレンマに襲われる中、捜査官にも犯人の魔の手が忍び寄ってくる…。
被害者を殺したのは犯人か、それともサイト閲覧者か? と問われれば、議論の余地もなく「犯人」と答える人が大半だろう。そもそも、そんな“仕掛け”を施さなければ被害者は命を落とさないからだ。また、サイト閲覧者はサイトを見ているだけであって、実際に被害者に手をかけているわけでもない。“見ているだけ”なのだから。それに、自分が見たという証がどこかに公開されるわけでもない。何ら良心が咎めることもない。だって“見ているだけ”なのだから。だがもし、閲覧の記録が公開されるとしたら?…閲覧者はここまで多くはならないだろう。ネット特有の“匿名性”が保持されているからこそ、ここまでの暴挙が可能となるのだ。
考えてみれば人間というものは、誰も見ていなければ、そしてあとでバレなければ、どんな悪事もやってのけられる生き物なのかもしれない。ネットの普及により人々は簡単に匿名性を手に入れ、バレない悪事を積み重ねる。だが、悪事というものはその人の善性を汚し、無意識下に溜められた罪悪感はその人の未来を暗いものに変えていく。それを避けるために宗教や道徳は悠久の昔から存在し、弱きに流れる人間に“あるべき姿”を説いてきたのだろうが…。ソドムとゴモラ、バビロンの塔、ノアの箱舟…滅ぼされるべき時代は今、ネットの普及によって作りあげられていくのか。
…などと大袈裟な展開はさておき。『真実の行方』の監督だというのでかなり期待していたのだが、できればダイアン・レインにはもう少し抑えて演技して欲しかった。それがなければもっと感情移入できただろうに。それとも、エンタメ性向上のためにはこれくらいのオーバーアクションは必須なのだろうか。それとも、アタシがクールすぎるのか。…きっと後者だな、うん。
ブラックサイト(Blu-ray)
監督:グレゴリー・ホブリット
脚本:ロバート・フィヴォレント/マーク・R・ブリンカー/アリソン・バーネット
出演:ダイアン・レイン /ビリー・バーク /コリン・ハンクス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ジャンル:洋画
公式サイト:http://bd-dvd.sonypictures.jp/blacksite/
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