「童貞放浪記」「結び目」等の人間描写を丁寧に描き撮る事に定評のある俊英、小沼雄一がメガホンをとり、原作者自身が昭和19年、土浦海軍航空隊に入隊し「105特別攻撃隊」として経験した事を下敷きに書いた清宮零による同名小説の映画化。戦時下自分の身代わりに特攻攻撃に志願し、散華した先輩との最後の約束を70年間、胸にしまい込んだ主人公勝雄(奥野匡)が自分の死期を悟り、先輩の墓前を訪ね約束を果たそうとするが、そこには様々な弊害が待ち受けていたのだった・・・。
日本は今年、終戦70年を迎える。それと同時に、戦争体験者の多くがさらに高齢化へ突入していく状況でもあった。
そんな中、劇場公開映画として「終戦のエンぺラー」「飛べ!ダコタ」さらに「永遠の0」「風立ちぬ」といった戦争を題材とした映画が頻繁に公開された。書店にも様々な戦争体験者の悲痛な内容の書物が並び、数多くの体験記を読む事ができるが、果たして戦争体験者は戦後生まれの人々たちに何を訴え掛けているのだろうか?
実は本作品の原作者も特攻隊を志願した戦争体験者のひとりであり、まさに高齢化により先輩や同僚たちが次々にこの世を去っていく姿を目の当りにして、この原作小説を書く事を決心したそうである。戦争の体験談とフィクションを織り交ぜた本作品は涙せずには観れない結末が待っている。
本作品の主人公、橋本勝雄役には2012年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、アッバス・キアロスタミ監督作品「ライク・サムワン・イン・ラブ」に主演の奥野匡。文学座や劇団NLTを経て85歳の高齢にもかかわらずカンヌ国際映画祭に参加し精力的に俳優活動を行っている。そしてヒロインの阿部紀和役には大林宣彦監督作品「あした」や阪本順治監督作品「北のカナリアたち」に出演している高橋かおり、さらに加山雄三の次男で曽利文彦監督作品「ICHI」成島出監督作品「山本五十六」出演の山下徹大や内田けんじ監督作品「鍵泥棒のメソッド」に出演の小山田サユリが脇を固め、ベテラン俳優織本順吉が紀和の伯父、阿部洋一役で見事ないぶし銀の演技を披露している。
脚本は「インターミッション」「百年の時計」と話題作が多い港岳彦。監督は「童貞放浪記」や「結び目」の小沼雄一。「結び目」の脚本も港岳彦が手懸けており、本作品はカイロ国際映画祭やサンタバーバラ国際映画祭に正式招待された。
同名タイトルの原作本は2014年11月、文芸社より全国の書店にて発売中。
監督:小沼 雄一
原作:清宮 零
脚本:小沼 雄一・港 岳彦
製作:清宮 武雄
プロデューサー:徳永 裕明
出演:
奥野 匡 高橋 かおり
長谷川 奨 高橋 里央 大内田 悠平
木下 藤吉 薄井 賢明 斉田 雅宏 窪田 克也
森本 のぶ 芳岡 謙二 岩本 羅美 野村 信次
山下 徹大 小山田 サユリ 織本 順吉
撮影:中村 夏葉
照明:渡辺 大介
録音:高田 伸也
美術:鈴木 伸二郎
衣裳:宮本 まさ江
音楽:宇波 拓
音響効果:武藤 晶子
VFX: 新妻 宏昭
助監督:吉川 忠雄
制作:加賀 量平・岡田 宏行
配給:SEIWA FILMS
公式HP:http://kuujin.jp
公開:2016年1月16日(土)より新宿ケイズシネマ、山形ムービーオン他全国順次公開