巨匠リドリー・スコットが製作陣に名を連ねるほか、キャストにはハリウッドの名女優エレン・ペイジ、TVシリーズ「トゥルーブラッド」のアレキサンダー・スカルスガルド、そして自ら脚本も手がける次世代のクリエイター、ブリット・マーリングらが主演として参加する本作。環境テロリスト集団から企業を守る女性エージェントの潜入捜査を描き、現代社会の裏側を暴いた超一級のサスペンスだ。
元FBIエージェントという経歴を持つジェーン(ブリット・マーリング)は、現在は民間調査会社の社員としてクライアント企業からの依頼で潜入捜査を行なう若き精鋭だ。社の代表からも目をかけられ、出世欲むき出しで新たな仕事に挑むジェーン。だが、潜入先の環境テロリスト集団「イースト」の思想にふれるうち、ジェーンの心境は少しずつ変化していく……。
誰かの犠牲のもとに栄華を極める、表面的には豊かに見えるこの現代社会。その面の皮をひっぺがし、歪んだ暗部をあからさまに描いた社会派サスペンスだ。現代の闇を大胆に暴き立てる女主人公が、ワイルドで危険な男に惹かれる反面、自分に心の安定を与えてくれる素朴なパートナーへの気持ちをも捨てきれずに揺れ動く。クールでタフなビジネスマンとしての彼女と、ひとりの女としての側面のどちらをも絶妙に絡ませつつ、物語を進ませていく筆致は見事というしかなく、映画としてはパーフェクトと言っていい。まるで小説を読んでいるかのような丁寧な脚本、そして演出。登場人物の心の声が台詞として流れるなどという陳腐な表現はなく、それぞれの役が口に出して発する台詞、行動、表情、衣装などの小道具、彼らが置かれている背景……スクリーンに映るすべてのアイテムが、物語のすべてを雄弁に語る。難解すぎて理解に苦しむということもなければ、簡単すぎて呆れるということもない、絶妙なさじ加減。残念な点といえばラストの超駆け足な表現ぐらいなもので、他は100点満点の出来といっても言い過ぎではない。監督と共同で脚本を書き上げ、主演もこなしているブリット・マーリングは、今はまだ日本ではさほど有名な女優ではないが、本作を見たすべての映画ファン達の心を一気に鷲掴みにするに違いないだろう。
「金こそがすべて」……世界を動かしている残念な真実を、小気味よく暴きだした大傑作。
監督:ザル・バトマングリ
脚本:ザル・バトマングリ、ブリット・マーリング
出演:ブリット・マーリング/アレキサンダー・スカルスガルド/エレン・ペイジ/パトリシア・クラークソン/ジュリア・オーモンド
配給:20世紀フォックス映画
公開:1月31日、TOHOシネマズ シャンテ/新宿シネマカリテほか全国ロードショー
©2013 Twentieth Century Fox