宇宙服のみで漆黒の宇宙空間に放り出された宇宙飛行士たち。果たして、彼らは無事に地球へと生還することができるのか? サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの初共演、そして登場人物もほぼこの2人のみという脅威の映像で贈られるスペース・サスペンス・エンターテイメント超大作。史上最高の宇宙体験映像と想像を絶する極限体験により、全世界興収5億ドルを叩き出した話題作だ。
地球上空60万メートルの無重力空間で通信システムの故障原因を探っていたライアン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士のマット(ジョージ・クルーニー)。いつものようにヒューストンとくだらないジョークを交わしながら作業に没頭したり宇宙遊泳を楽しんでいる彼らのもとに、緊迫した命令が届いた。スペース・デブリと呼ばれる衛星の破片が彼らをめがけて飛んで来るというのだ。慌てて船内に戻ろうとする彼らだったが……。
重力のない空間においては、自分が移動したい方向へ進むのも一筋縄ではいかない。こんなにも開放された空間でありながら、自由を得るためには驚くほどの努力を要する。無からすべてを生み出した宇宙は、彼らを冷たく突き放し、追いつめ、彼らを無へと向かわせていく。何も遮るものがない宇宙空間にも関わらず、逆に密室劇を見ているかのような錯覚にも陥っていく。
登場人物が2人だけ、しかも舞台は宇宙空間のみといえど、その映像に飽きがくることはない。しっかりと心理描写はされているし、ライアン博士が抱えるトラウマは彼女がおかれた状況ともリンクし、そしてある程度のドラマも展開される。スリルスリルの連続で手に汗握る展開からも目が離せない。
このように、物語の中身と映像の素晴らしさに目を向ければ、いいことずくめなのは間違いない。興味深いのは、そのストーリー展開における各国の設定だろう。本作の危機の原因を作り上げたのはロシア。細かいことは気にしないアメリカ人の国民気質を反映し、ヒューストンの楽観的な判断から危機に見舞われる登場人物たち(このあたりはある意味、自虐的とも取れる)。彼らの命を救う重要なファクターとなるのが、世界一人口の多いあの国。これはそのまま現在のアメリカの政治経済事情とリンクするし、特に最後のあの国なんかは、ハリウッドにとっては今やドル箱だ。すり寄ってすり寄ってすり寄って、なんとかかの国での興業もアゲたいという意図の表れとも取れる。また、感動的大作でこうして観客の無意識に訴えかけておき、今後アメリカが政治的に舵を切る方向づけの一助となれば……という意図と取れなくもない。アメリカの映画業界を牛耳るプロデューサーの富裕層たちも、もうあの国なしでは生きていけない状況に追い込まれつつあるのだろうか。
『アバター』のジェームズ・キャメロン監督も「完全にノックアウトされた。これは史上最もすぐれた宇宙の映像美で創り上げた、史上最高のスペース・エンターテイメントだ! キュアロンとサンドラは、無重力空間で生き延びるために闘うひとりの女性の姿を、まさに完璧に創り上げた」と絶賛したという本作。この革命的な映像は、ぜひとも3Dの大画面で体感していただきたい。
監督:アルフォンソ・キュアロン(『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』『天国の口、終わりの楽園。』)
脚本:アルフォンソ・キュアロン&ボナス・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック(『しあわせの隠れ場所』)、
ジョージ・クルーニー(『シリアナ』『マイレージ、マイライフ』)
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
公開:12月13日(金)、丸の内ルーブルほか全国ロードショー 3D/2D IMAX同時公開
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