ジェイソン・ボーンは氷山の一角に過ぎなかった。CIA極秘計画が暴かれた今、国家はすべてを遺産(レガシー)にするべく動き出す……! マット・デイモン主演で大ヒットとなった『ボーン 』三部作だが、デイモンがシリーズを降板した今、最新作となる本作で新たな主役を務めるのはジェレミー・レナー。『ハート・ロッカー 』と『ザ・タウン 』でアカデミー賞にノミネートされて以来、『アベンジャーズ』、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル 』等、アクションもののハリウッド大作に今や引っ張りダコの超実力派。新たな展開が繰り広げられるなか、キレのあるアクションを見せながらスクリーン狭しと動き回るジェレミー。初代のマットを凌ぐ魅力が画面いっぱいにあふれるアクション大作だ。
CIAの極秘プログラムによって作り上げられた暗殺者、ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)。だが、暗殺者育成プログラムは複数存在していた。アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)もまた、人格・肉体改造計画により"最高傑作"となった男だ。雪山で訓練を積んでいた彼だが、相次ぐ予定変更の指示を受け、プログラムに異変が生じていることに気づき始める……。
全シリーズで脚本を手がけたトニー・ギルロイが、今回は初監督。単なる見せ場ではない重厚な質感のアクションが、全編を支配する。アクションという水を得た魚のように生き生きとスクリーンを泳ぎ回るジェレミーは、カッコイイを通り越してウツクシイ。危険なシーンもすべて一人でこなしてまさに本領発揮といったところで、マット・デイモンのアクションとはまた別の輝きを見せてくれる。
前作まではボーンが自分の出自を求めて動き回り、果てにたどり着いたのは自分を見失いかねない愕然とした事実であった。胸を抉るようなその事実と正面から向き合い、血反吐を吐くほどの思いから立ち直り、新たなる自己を確立するという壮大なストーリーがシリーズの魅力だったのだ。だが本作では逆に、アーロンが暗殺者から逃げて逃げて逃げまくる。単純明快なストーリーがそこにあるにはあるのだが、副作用のくだりもイマイチ説得力に欠け、シリーズを支配していた濃厚な苦悩感も薄い。ラスト、続編も可能なように終わってはいるのだが、それ相応のストーリーを仕立てたり、アーロンの苦悩をもっとクローズアップしたりしなければ、前三部作を超える人気を得るのは難しいのではないだろうか。…と、一ジェレミーファンとしてはついつい心配してしまうのである。
完成披露試写会で初来日を果たしたジェレミー本人は、メモを見ながら日本語で挨拶したり、最後は通訳者にまで握手しに行ったりと、人懐っこくて非常にオチャメ。アクションは今や右に出る者はいないのだから、彼の演技者としての魅力が存分に発揮できるような続編に、早くも期待したいところだ。
監督・脚本:トニー・ギルロイ
出演:ジェレミー・レナー/エドワード・ノートン/レイチェル・ワイズ/ジョアン・アレン/アルバート・フィニー/デヴィッド・ストラザーン/スコット・グレン
配給:東宝東和
公開:9月28日(金)より、TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
公式HP:http://bourne-legacy.jp/
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