リドリー・スコット&トニー・スコット兄弟製作、リーアム・ニーソン主演のサバイバルアクション『THE GREY 凍える太陽』。今年6月に60歳の誕生日を迎え、年を重ねるほどに活躍の機会を増やすリーアム・ニーソン。『シンドラーのリスト 』のオスカー・シンドラー役をはじめ、『マイケル・コリンズ 』、『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 』など数々の話題作に演技派俳優としてキャリアを重ね、近年では『96時間 』『アンノウン 』でアクションスターとしての才能も開花させているベテラン俳優。マイナス20度の極寒の山中での過酷な撮影環境にも関わらず「この映画は僕の中にある野生を引き起こした」と本人も語るように、凄味のある演技が本作の見どころだ。
石油掘削現場で働く屈強な男たちを乗せた飛行機が、凄まじい嵐に巻き込まれアラスカ山中に墜落。7人の男が生き残ったが、なんと彼らが放り出されたのは、吹雪が荒れ狂い大地のすべてが深い雪に覆われた、想像を絶する極寒の地だった。方角も定まらない中、生き残りかけて南へと移動を始めるが、すぐに野生のオオカミたちの攻撃が始まる。その一帯はオオカミたちの縄張りだったのだ。厳しい寒さに体力を奪われ、まともな食料も手に入らない苛酷な状況を強いられた男たち。やがて大自然の猛威により命を落とす者や、侵入者を執拗に攻撃するオオカミの犠牲になる者も現れ、ひとりまた一人と生存者の数が減っていく。果たして彼らの生死を賭けた壮絶な闘いの先に待っているものとは——。
サバイバルアクションといえば『エイリアン 』、『プレデター 』、『キューブ 』などが私の好きな作品ではあるが、今回紹介する作品はそういった非現実的な映画ではなく、大自然を舞台にした超リアルな作品だ。近年ではシネマピアでも紹介した『サンクタム』が、このタイプの作品になるだろうか……。
カーナハン監督は、主役のリーアム以外はあえて無名の俳優を起用し、次の犠牲者を簡単に予測できないように演出している。その演出が、次に何が起こるのかといった緊張感とスリルをあたえる。また、日本人カメラマンのマサノブ・タカヤナギによる臨場感溢れる大自然での撮影が、模型でもCGでもない圧倒的なリアリティを伝える。撮影時にクレーンを動かすためのオイルが凍って固まってしうほどの中での撮影だったようだ。そして、この映画でもっとも重要なのが狼の存在。巨大なパペットを使ったアニマトロニクスや訓練された本物の動物たちを巧みに使った映像がこの作品を支えている。大自然の猛威からいかにして逃れるか、オオカミたちの攻撃からいかにして逃げるか……その映像はハリウッド映画お得意のド派手な表現が一切ない、あえてハリウッド映画的でない演出が、逆にリアルで恐ろしい。
このタイプのサバイバルアクション映画の展開を覆すラストシーンにも注目だ。
夏休みに家族で楽しく映画を観るといった感じではまったくない。この男臭い映画は大人が楽しむ作品である。
監督:ジョー・カーナハン
製作:トニー・スコット/リドリー・スコット
出演:リーアム・ニーソン/ダーモット・マローニー/ジェームズ・バッジ・デール
撮影:マサノブ・タカヤナギ
原作:「Ghost walker」イーアン・マッケンジー・ジェファーズ
配給:ショウゲート
協力:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
公開:2012年8月18日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
公式HP:grey-kogoeru.com
Facebookページ:http://www.facebook.com/grey.kogoeru
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