父親は狼男、母親は人間、その間に授かった二人の子供の物語、『おおかみこどもの雨と雪』。『時をかける少女 』、『サマーウォーズ 』で多大な評価を受けるアニメーション映画監督の細田守による新作は、日本公開前からフランスを初め世界34の国と地域で配給が決定されるなど、その確かな作品力が大きな話題を呼んでいる。
大学生の花(はな)が恋した男、その正体は“おおかみおとこ”だった。愛し合った二人はほどなく二人の子供を授かる。雪の日に生まれた姉は雪(ゆき)、雨の日に生まれた弟は雨(あめ)と名づけられたが、二人とも父の血を継ぐ“おおかみこども”だった。二人の素性を隠しながら、ささやかながら幸せな生活を送っていた4人家族。だがある日、思いもよらぬ出来事でその生活は終わりを迎える……。
毎週のように映画を見ていると、段々と感動するボーダーラインが高くなっていき、ちょっとやそっとのことでは心が動かなくなる。いわば不感症だろうか、残念な職業病にかかっているとも言える。だから年間で感動する作品というのは本当にごくわずかだ。そして驚くべきことに、本作はその針の穴をくぐり抜けて私の感動の鐘を鳴らし、大量の涙を奪った数少ない作品だ。
ズルい。細田監督は本当にズルい。母としての子育て、そして子供二人が成長し、それぞれが互いに影響しあいながら人生を歩んでいく。主要人物はこの三人で、家族としてのそれぞれの思いが交叉しあいながら、物語が進んでいく。たったそれだけのことなのに、こんなに真っ当なやり方で、いとも簡単にこんな名作を作り上げてしまうだなんて。私は別に脚本を書いたりすることはないが、なんだか嫉妬心まで覚えるレベルだ。これは『サマーウォーズ』までの細田作品とは明らかに一線を画す。本作を大きなステップとして、アニメ映画監督として宮崎駿と肩を並べることになるのは間違いない、と言ったら褒めすぎだろうか。
ストーリーとしての作品力もさることながら、昔ながらの2次元アニメとCGとの融合で出来上がった新境地とも言える映像が、神々しいほど美しい。声優陣も、宮崎あおい、大沢たかお、菅原文太と超豪華だ。今年、本作を観ずして映画は語れない。
監督・脚本・原作:細田守
脚本:奥寺佐渡子
声の出演:宮崎あおい/大沢たかお/菅原文太/染谷将太/林原めぐみ
配給:東宝
公開:7月21日(土)全国東宝系ロードショー
公式HP:www.ookamikodomo.jp
©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会