狼たちへの伝言

『真のインテリジェンスを備え、退くことを拒み、こだわるべきところは断固こだわる。常にエキサイティングな状況に身をおく「狼」だけが勝者として生き残る。目先の損得や名誉が欲しい、柵の中でぬくぬくとしていたい「ブタ」は死ね』
もちろん「狼」として生き抜いてきた落合は言い放つ。
両国高校在学中、すでに日本を見限り、卒業と同時に米留学試験にパス。3000ドルの奨学金つきでぺンシルバニア州立オルブライト大学への入学を決める。
ところが彼には旅費がなかった。山下公園にテントを張ること3日目、15日間の臨時雇いのボイラーマンとして、アルゼンチナ丸乗船のためには土下座もした。
「目的意識、それを貫き通すためなら、何をしても精神は自由だ」
と回想する。

「生きることは攻めること、防御的な人間に面白いヤツはいない」
主張どおり知力.腕力.攻撃の限りを尽くし「スーパージャップ=ノビー」の名は学内に知れ渡る。その頃の交遊録にはロバート・ケネディーの名も。
卒業後オイルマンとしてビジネスに身を投じた彼は様々な世界情勢の表と裏を見る。ホワイトハウス、CIA、KGB、SAS、MOSAD…。世界のありとあらゆる諜報が自然と耳に入る。やがてジャーナリストの道に分け入ることは必然だった。
ケネディー兄弟が殺された真の意味、何ゆえのベトナム戦争だったのか、大韓航空機爆破事件の真実etc…。国際ジャーナリストの名を負う彼の情報の数々は、どんなドラマにもましてドラマチックだ。

その彼を日本へ引き戻したのが、シカゴのバーで聴いた演歌「無法松の一生」だったというから、笑ってしまうような、妙に納得してしまうような…。

とにかく思春期の男の子をお持ちの親ごさん、「たまには読書でもしろ!」とかなんとか叱ったりしないで、そっとこの一冊をその辺に転がしておいてご覧なさいな。開いたらしめたもの。
現在の彼が読み返したら、ちょっと赤面するかもしれないと思うほど「ブーン、ブーン」いわしちゃっていて、ムツカシイ年頃の男の子にはグッとくる。
本好きになることは、筆者の経験から、請けあう。
(あっ、例外もいた!)
2巻、3巻も出ていて、これまた好都合。


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作者名:落合 信彦
ジャンル:自伝・エッセイ
出版:集英社文庫

狼たちへの伝言(集英社文庫)