冬を迎える前に――雲上の散歩道で高山植物との衝撃的な出会い

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いってきまーす
10月26日、札幌ではついに初雪が降った。今年の夏は北海道でもびっくりするほどの暑さが続き、このまま夏で冬が来なかったりしてね、なんて話したりしていたのだった。でも10月も下旬になるとめっきり冷え込んできて、もうストーブなしでは生活できない。がっかりしたような、ほっとしたような、ほとんど諦めの境地の北海道民である。冬がやって来る前に、何をすべき? 地面が雪に覆われてしまう前に土や草花の色を目に焼き付けておくのだ! 
いざ北海道大自然の最高峰大雪山旭岳へ。

標高1600メートルの姿見の池まで大雪山旭岳ロープウェイがあり、比較的手頃な登山が楽しめる。そのため、多くの登山者が訪れる。しかし油断はならない。夏でも天候が急変すると疲労凍死者が出るほどなのだ。そんな厳しい環境の中、姿見の池付近はなだらかな上り坂。辺りには高山植物が広がり、本州では3000メートル級の山にしかない植物を見ることができる。

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ここから先は本格的登山の用意を
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チングルマとキバナシャクナゲ、
圧巻の様子
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同じ時期に一気に花開く
姿見の池は水面に旭岳の姿を映し出し、池の先にある噴気孔からは噴煙が上がっている。山々の眺望もすばらしい。十勝岳連峰・芦別岳・暑寒別岳が一望でき、まさに雲上の散歩道。ああ、なんて神秘的。うっとりと北の自然に酔っている私の眼に飛び込んできたのは、鮮やかな色の花々だった。

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うっとりその1・雲上の散歩道にうっとり
北国の花って、ライラックとかラベンダーみたいにしおらしくって繊細じゃなかったっけ? いやいや、秋の花はちょっと違う。ナナカマドはあざやかに紅葉し、赤い実が毒々しいほど。実際北欧では魔よけとして使われるパワーのある植物。チングルマの紅色とキバナシャクナゲが群集して咲く様は圧巻。

高山植物の生育環境は、植物の生育には厳しいものだ。冬季の積雪と平均気温の低さ、一日の最高気温と最低気温の温度差が大きいこと、風が強いこと、貧弱な養分の土壌、日差しが強く特に紫外線が 101110_01_06.jpg
うっとりその2・
姿見の池に映る旭岳にうっとり
多いなど。それぞれの植物がその環境に応じた様々な特徴をそなえている。そして、植物体に比べて花が大きく、派手なものが多い。植物の活動が夏に限られるため、ほとんど前種が同じ時期に花をつける。やれる時やっておこうじゃないの、と言わんばかりの心意気。

実はこれら、氷河期時代の植物の生き残りだと考えられている。氷河期からとてつもない長い間を生き抜いてきたなんて、北海道の高山植物よ、なんというたくましさ!

厳しい自然の中で、与えられたものを最大限に利用し、どんな環境にも適応していく。そして、しっかりと自己主張する姿。なんだか元気になってきた。これで冬を迎える心の準備は万端だ。